医療教育情報センター

乳癌の最も確実な診断―病理組織診断と細胞診―

  現在、日本では乳癌検診の精度が問題となっているが、乳癌を発見するためには触診、 マンモグラフィー(レントゲン撮影)などで乳房の中の塊を見つけ出す事で、癌発見の糸口を 掴もうとしている。従って癌がある程度の大きさにならないと分からない。
  また、乳房に塊が出来る病気は癌だけではなく、他にも乳腺症、線維腺腫、乳腺炎、脂肪壊死、 胸壁結核、胸壁静脈の病気であるMONDOR病、副乳、乳腺導管内乳頭腫、葉状腫瘍など、 多くの疾患がある。従ってこれらを鑑別しなければならない。
  診断のためには、触診やマンモグラフィーの他に、もしも乳頭から血の混じった分泌物が ある場合には、その分泌物を顕微鏡用ガラスに塗り、それを染めて顕微鏡で観察する細胞診 という方法がある。それによって癌細胞を直接見つければ診断がつく。
  その他に細胞診は、その塊(腫瘤)に注射針を直接刺して、吸い出し、それをガラ スに塗って、染色をし、顕微鏡で癌細胞を探す方法 もある(針吸引細胞診)。ただし、 癌細胞は『癌細胞です』という札をつけているわけではないので、時には他の良性病変の細胞と 見分ける事が困難なこともある。
  現在の人類の知恵で、癌と確定する最も信頼性の高い方法が病理組織診断(生検とも呼ば れる)である。これは注射針のように中心が中空になっている太い針を塊の中に刺して、病変部 の組織の一部を採取する方法(針生検)、塊の一部をメスで切開して採取する方法(切開生検)と 塊の大部分あるいは全部を摘出する方法(切除生検)などがある。殆どの場合、この病理組織 診断で病名は決定される。
  以前は乳癌と診断されれば、乳房切断術という広範囲の手術が行われ、乳房を失うことに なったが、癌とその周囲の部分のみを切除しても、手術成績は変わらないというデータが出て、 最近では乳房を温存して、腫瘤部分を切除する方法が行われている。多くの場合、乳頭は 残り、皮膚の切除も小範囲にとどまる。この手術の場合には、メスで切開した場所に癌細胞が 無いことを手術中に確かめる必要がある。特に乳頭側には、乳腺導管が繋がっており、 そこに癌細胞が居ないかを顕微鏡で調べる必要がある。そこに癌細胞が残って居れば、 再発が起こるからである。この診断は迅速病理診断と呼ばれ、結果は病理医から手術室へ 10分前後で報告する事が出来る。ただし、その病院に病理医が常駐していなければ 出来ない。勿論、手術終了後にリンパ節への転移の有無も含めて、より詳細な病理学的検索が なされ、主治医である外科医へ数日後には報告される。
  乳癌細胞にも個性があり、増殖能の高いもの、女性ホルモンによって増殖が促されるもの 、抗がん剤に感受性のあるものなど、細胞生物学的特徴を切除した組織から調べることが出来る。 この結果、乳癌のそれぞれの特徴によって、予後の推定や治療法を個別に選択する時代と なってきた。(IS)

(No003;2003/10/10)



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