医療教育情報センター

冠動脈の調べ方とその進歩

 冠動脈は心臓の壁(殆どは筋肉、すなわち心筋)へ酸素と栄養を運ぶ血液の通路である。
 動脈硬化が怖いのはその内腔が閉塞して、血液が流れなくなるためである。もし冠動脈で 動脈硬化が起こると心筋の一部が死んでしまう。この状態を心筋梗塞という。動脈硬化は、高血圧、高脂血症、喫煙、糖尿病などで起こり、且つ促進される。そのため、これらの4因子を「死への4重奏」と呼ぶ。動脈硬化はいつ発生するか分からない。意識されないまま、長い年月を経て進行してゆく。
 冠動脈が動脈硬化によりその内腔が異常に狭くなっているかどうかを調べるために、いくつかの方法が開発されている。
 心電図は心筋細胞が活動する時の電位を波形にして心臓の収縮・拡張運動を調べる方法で あり古くから用いられていた。もし心筋へ運ばれる動脈血が減少すれば、心筋の働きの異常波形を通して間接的に冠動脈の状況を推測する事ができる。
 また細いカテーテルを動脈に通して、冠動脈(心臓から出た直後の大動脈に入り口がある)の中へカテーテルを入れることが出来る。そのカテーテルから造影剤を流し込んで映画を撮れば、動脈のどの場所がどの位狭窄しているかを見ることが出来る。しかこの方法は(シネ冠動脈造影法)は動脈の内腔の影を見ているのであるから、狭くなっている場所の動脈の壁の状態を知る事は出来ない。
 次にカテーテルと同じように細い弾力性のある管を持った冠動脈内視鏡が開発された。これは動脈の内面を観察できる特徴をもつが、動脈壁の厚さを測ることは出来ない。
 更に血管内エコー法が開発された。エコー(超音波)法は、戦争中に敵の潜水艦を超音波で発見しようとしたものが原点である。この方法は、動脈のある断面の厚くなった壁の中身を観察する事ができ、脂肪と壊死成分の多い軟らかい病変部は破れ易く、もし破れればそこで血液が固まり(血栓)、心筋梗塞を起こすという新しい心配を生む事となった。しかし、この方法も動脈のある特定の断面しか観察できない。
 これらの方法はいずれも冠動脈の中へ細い管を挿入するという侵襲的な技法である。
 そこで患者さんに負担のかからない非侵襲的な方法の研究・開発が進められてきた。
 心臓は常に動いているので、外から放射線を使って撮影しても冠動脈の横断面を捉えることが困難であったが、心臓の動きを詳細に観察すると、動きが停滞する瞬間があり、その瞬間と連動させてCT撮影(コンピューターを使った断層撮影)を行うという新しい方法が考案された。冠動脈の輪切り(断面)像を多数撮影する方法(マルチスライス冠動脈CT)であり実用化され始めている。この方法は動脈の内腔の状態と壁の厚さ及びその性状まで観察でき、病変の状態を観察するのに威力を発揮できる。そして、冠動脈の中へ管を入れることもなく、期待できる冠動脈の検査法といえる。(IS) 

(No008;2004/03/05)

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