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プロフェッショナル オートノミ− とは

 プロフェッショナル オートノミ−とは聞き慣れない言葉かもしれない。また適当な日本語訳もまだない。あえて訳すなら、「職業的自律性」ということになるが、それでは何のことか分からない。
 オートノミ−(autonomy)とは、自治、自律、自主性を意味する。自律とは、「自分の気ままを押さえ、または自分で立てた規範に従って自分のことは自分でやっていくこと(岩波・国語辞典)」である。
 そもそもこの言葉は、カントの「実践理性批判」の中に出てくる。カントは、「人間は何をなすべきか」という問いに対し、理性、良心、善意志を説明し、人間は本来、善意志(心の道徳律)をもって生まれており、これを尊重することによって意思の自律性が保たれるとした。つまり自己が自己を律することによって始めて人間理性は善なる意思の実践を確立できると考え、これを実践理性の自律とした。
 プロフェッション(profession 職業)とは、専門性をもった職業をさす。職業人は一つの集団を形成するのが常である。それは組織と呼ばれ、規約を作って、それを遵守し自らそのメンバーを教育し合い、自主的に運営されていくという意味で自律的 autonomic である。医師、弁護士、教員において然りである。この自律性(オートノミ−)こそが、プロフェッションと非プロフェッションとを区別する鍵であり、その意味でプロフェッショナル オートノミ−は、まさに自ら選んだ職業的責任を果たすために、自分で自分を律する、自己の決定を支配する、という積極的自由 positive freedom に他ならない。
 かつて日本医師会武見太郎元会長は、プロフェッショナル フリーダムという言葉を提唱した(昭和54年)。用いられた意味は、プロフェッショナル オートノミ−と恐らく同じであろうと思われるが、プロフェッショナル フリーダムというと、「干渉されたくない」というエゴイズムの烙印を一般社会から押されかねない。そうした誤解を避けるために、医師としての責任を果たすために理性に裏打ちされたプロフェッションとしての積極的活動を意味するプロフェッショナル オートノミ−という用語の方を大事にしたい。
 医師は患者のために専門職業人として、自らの姿勢を正し、自らを律していくことが重要なのである。(NH)

(No010;2004/06/14)

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