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健康寿命をのばす一つの戦略―「寝たきり予防健診」

 周知のように、厚生労働省は21世紀における国民健康づくり運動として「健康日本
21」を提唱している。高齢社会を迎えて平均寿命ばかりでなく健康寿命をのばすことを目指したものである。生活習慣病を防ぐために正しい生活習慣を身につけること、人生を幼年期から高年期まで6つの段階に分け、それぞれに応じた目標を掲げていること、2010年を目途にした具体的な数値目標を示していることなどが特徴である。
 2004年5月、政府与党は健康寿命を2年程度伸ばすことを目標とする「健康フロンティア戦略」を策定した。戦略の実施期間は2005年から14年までの10年間。数値目標として、ガンの5年生存率の改善や心疾患、脳卒中の死亡率改善、要介護者の減少などを明記。具体策としてガン診療拠点病院の整備や、医療技術の研究開発推進を盛り込んでいる。
 健康寿命とは、元気で活動的に暮らすことができる長さ、つまり痴呆や寝たきりにならない状態で生活できる期間のことをいうが、健康の定義の仕方によって異なってくる。
その尺度としては、病気や障害の有無、寝たきりの有無、自分自身の健康感の有無、日常生活における自立の有無、等がある。
 日本人の健康寿命が男性72歳、女性77歳と世界一を続けている最大の原因は、平均寿命が男性78歳、女性85歳と世界一であることにある。この平均寿命と健康寿命の差を縮めることが健康寿命をのばすことにもなり、高齢者に対する対策が重要となる。その意味では、病気の予防に焦点を当てた現行の基本健診よりも、高齢者のQOLの維持・向上を目指し、身体面だけでなく、精神面、社会面を含めた総合的な取り組みが求められる。
 こうした観点からすると、東北大学と仙台市によって意欲的に試みられている「寝たきり予防健診」は、これからの高齢者の健康診断のあり方について示唆するところが多い。健康診断の概要は表に示すとおりである。
 この「寝たきり予防健診」の素晴らしさは、総合的に心身の健康状態をチェックするだけでなく、検査結果を一人ひとりに説明し、問題がある場合は、それを改めるように相談に乗ったり、機能訓練の受け皿を用意していることである。ややもすれば、検査だけが一人歩きし、病気づくりにもなりかねない健康診断と異なり、検査の結果が活かされており、今後高齢者健康診断のモデルとなりうると考えられる。(TI)

表 「寝たきり予防健診」


★主な健診項目
  1) 検査:呼吸機能 動脈硬化 骨密度 採血検査
  2) 運動機能
  3) もの忘れ・痴呆
  4) うつ状態
  5) 歯科健診
  6) 生活習慣アンケート
★結果説明会
★運動訓練教室、うつ治療の地域ケア、痴呆予防の学習教室、
  歯磨き・口腔ケアの教室

  (辻 一郎『のばそう健康寿命』 岩波アクティブ新書 2004)

(No011;2004/07/05)

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