医療教育情報センター

PETがん診断

 新しいがん診断検査法としてPET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー、陽電子放射断層撮影)の利用が広がり始めた。PETは、陽電子(ポジトロン)を放出する原子(フッ素、炭素、水素、窒素)を組み込んだ物質を体内に注射して、その物質が集積・代謝される過程で放射される光を検出して画像化することにより臓器の活動状態を知る検査機器である。検査の目的(腫瘍検査、脳機能測定、血流量測定、酸素消費量測定、アミノ酸代謝測定、など)によって、どのような物質(ポジトロン用放射性薬剤)を用いるかが異なる。がん診断に最もよく用いられる放射性薬剤は、半減期が約2時間で原子量が18のフッ素(18F)で置換したブドウ糖に構造が酷似したFDG(18F−フルオロデオキシグルコース)で、そのためFDG−PETと呼ばれる。FDGは、「にせ」のブドウ糖なので、ブドウ糖が多く貯まったり、よく利用される部位の発見に役立つ。がん細胞は、(脳や肝臓や心筋などを除いて)他の正常細胞の3〜8倍もブドウ糖の代謝が活発なので、FDGががん細胞に多く集まって光を放つところを測定する。半減期が短いことは、生体にとって有利であるが、これを用いた検査は短時間に素早くしなければならない。しかも、放射性薬剤はサイクロトロンというイオン加速装置で合成するので、病院内やその近隣に製造施設があることが要求される。
 FDG−PETでは、肺がんをはじめ、膵がん、乳がん、大腸がん、脳腫瘍、悪性リンパ腫、転移性肝がん、頭頸部がん、悪性黒色腫、原発部が不明のがん、卵巣がん、食道がん、などの発見と診断に使われる。しかし万能ではない。これまでに得られた結果では、@小さながん(約5ミリ)を従来の検診方法より早期にかつ高率で発見できる、Aがんの活動状態(良性・悪性の診断、進行度、手術後の状態の判断、など)を診断できる、B特定の部位ばかりでなく約30分間でほぼ全身を検査できる、CCTやMRIのように寝た体位で実施でき造影剤のような副作用もなく患者負担が少ない、などの長所がある。一方、@偽陽性・偽陰性があり結果としてがんの約30%が発見できない、A泌尿器系腫瘍の診断が困難(FDGが尿路に排泄されるため)、B甲状腺がん・肝がん・腎がん・胃がん・糖尿病・高血糖の人の検査には向かない、C高額の設備投資(10億円以上)と診断能力の高い医師が必要である、などの短所や課題がある。
 PET検査とCT、MRIを併用するとがんの発見率は向上するので、PETとCTを一体化した機器も開発されているが、一般への普及はまだ先のことである。がん検診の実績がある欧米では、先ずPETで検査をし、しかる後に他の精密検査をするという方向にあるが、日本はPETをもつ施設が少なくまたCT・MRI・内視鏡それぞれの優れた技術が発達していることから欧米とは事情が異なる。
 PET設置施設は関東・関西・東海を中心に現在60施設以上あり、その約7割は治療と研究用である。高額のため単独病院での設置には限界があるので、病院内にはPETと専門医が、病院外では企業が放射性薬剤の製造と販売をするという新しい連携体制ができつつある。最近、会員制のPETを含む総合がん検診施設もできて検診ツアーまで組むところも出てきたが、費用は自費で20万円前後かかる。一部の住民のニーズに叶うとはいえ、誰もが利用できようになるにはしばらく時間がかかりそうである。(RT)    

(No017;2005/01/14)

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