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心房細動の合併症である血栓性脳塞栓症の新しい予防法−PLAATO

 プロ野球の読売巨人軍名誉監督 長嶋茂雄さんが脳梗塞に罹患し、リハビリを受けていると報道されている。長嶋さんは、心房細動という不整脈があったので、左心房から袋状に膨隆している左心耳という部分に血栓(血管の中で凝固してしまった血の塊)が出来ていて、それが剥がれて血流とともに左心室から大動脈へ流れ、それが更に脳の動脈へと進み、ある部分で動脈を閉じてしまい(即ち血栓性塞栓症)、その先へ血液が行かなくなったため脳梗塞(動脈が閉鎖したため、その環流領域が壊死になること)になったのであろうと言われている。
 心耳に血栓ができると心房細動が起き易い。心臓が収縮するときには心房も収縮するが、何らかの原因で心房が通常よりもかなり早く、頻回に収縮するようになると、心房細動という。
 心臓を収縮させるための刺激(命令)が伝わる部分を刺激伝道系と呼ぶ。正常であれば、刺激は心房から心室へと伝わり、単位時間当たりの収縮・拡張の回数は心房も心室も同数であるが、心房細動が生じると、心房は極端に多くの収縮・拡張運動を繰り返し、心室は心房からのすべての刺激に応じ切れないこととなり、心室の収縮・拡張運動は心房のそれよりもはるかに数が少なく、且つ一定の間隔を保って収縮できなくなり、不整脈となる。
 心房細動があって、左心耳に血栓が出来ていると想定される場合、脳動脈の血栓性塞栓の予防はきわめて重要である。その予防のためには、内科的には抗血液凝固療法が行われるが、抗凝固療法は、出血したときに血液が固まり難くなっているので、重篤な出血を起こす副作用がある。外科的には予防のために左心耳を摘除する方法も行われている。
 最近、カテーテルを使って左心耳を内側から閉鎖してしまうデヴァイス(device)が開発され、アメリカ、ヨーロッパで臨床試験が行われているという。このdeviceを用いる方法はPercutaneous Left Atrial Appendage Transcatheter Occlusion(経皮的経カテーテル的左心耳閉鎖術)といい、その頭文字を取って『PLAATO』と呼ばれ、日本への導入が期待される。(参考文献:仲井俊子.The PLAATO:心房細動における心原性脳塞栓予防のためのNew Device.日大医誌 63(6):274、2004) (IS)                 

(No20;2005/05/06)

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