医療教育情報センター

再生医療

 再生医療とは病気や外傷によって失われた組織や臓器の機能を回復あるいは再生させることを目的に、ヒト細胞を利用して行われる医療です。一方、失われた組織や臓器の代わりに他人の組織や臓器を移植するのは移植医療ですが、長年の議論の末1997年に日本で臓器移植法が制定されてから、1999年になってようやく脳死患者からの臓器提供があり、心臓、肝臓、腎臓などの移植手術が行われました。その後年間に数例の提供者しかなく、2005年5月末までに36例の臓器移植が行われましたが、移植でしか助からない患者さんは移植待機リストに登録していても、臓器提供者が現れず臓器移植をうけることができなくて亡くなる方が多数おられるのが現状です。
 これまで「脳の損傷は回復しない」「心臓の筋肉はいったん死ねば元にもどらない」「永久歯が抜けると二度と生えてこない」といわれてきましたが、これらを再生できるのではないかという夢のような医療が再生医療に期待されています。
 身体の中には再生能力を持つ細胞すなわち体性幹細胞が、皮膚、骨髄、腸管などに存在していることが知られていて、皮膚の幹細胞を培養して大きくした皮膚を用いて欠損部分を被うことが試みられています。また、臍帯血のなかにある幹細胞は、血液細胞の他、骨の細胞、心筋細胞、肝臓や腎臓の細胞さらに神経細胞にも分化する能力のあることがわかってきましたので、臍帯血を冷凍保存しておくことにより将来再生医療が必要となったときに使えるのではないかと言われていますが、現在の臍帯血バンクは骨髄移植を必要とする人に使われています。
 受精卵の分裂途中の細胞を取り出して培養して種々の組織に分化する能力のあるES細胞(胎性幹細胞)を作り出すことに成功して、さらに細胞工学の技法を使って目的とする臓器まで分化させることが可能であれば移植臓器の代わりになるのではないかと期待されています。もしもクローン技術をヒトにも応用して移植の必要な患者から得られた遺伝子をもつES細胞が作られ、これから臓器にまで分化させて移植に使えるようになると、免疫学的な問題はなくなり理想的な臓器となる可能性もあります。2003年5月27日に京都大学再生医学研究所でヒトES細胞の作製に成功したことを公表しましたが、日本では総合科学会議生命倫理専門調査会は2年半の検討の結果、2004年7月に実験的な研究にのみES細胞の使用をみとめています。
 現在再生医療が試みられている疾患としてはパーキンソン病、糖尿病、心筋梗塞、脊髄損傷、肝硬変などが挙げられていますが、ES細胞を用いる再生医療には倫理的問題があり、臨床的応用までにはまだまだ乗り越えなければならない課題が山積しているようです。(SF)                 

(No21;2005/07/01)

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