医療教育情報センター

在宅ホスピス

 日本人の死因について見ると、1位がん、2位心臓病、3位脳血管疾患で、順位は20年間変わっていない。平成16年度のがんによる死亡者数は32万人で減少傾向は見られない。全死亡者数に対する割合は31.1%で、およそ3人に1人はがんで亡くなっていることになる。亡くなる場所は、約8割が病院である。
 厚生労働省が2004年7月にまとめた終末期医療に関する調査報告書によると、一般国民で「住み慣れた場所で最期を迎えたい」と答えたのが62%。ところが、家族の介護負担や緊急時の対応などの不安からほとんどの患者が在宅医療に踏み切れず、入院を続けざるを得ない。
 高知県の過疎の町にある「拳の川(こぶしのかわ)診療所」に30年前に赴任した疋田善平医師は、末期医療で“旅立ちは自分の意志で”を尊重する医療を実践し、本人も家族も医療チームも満足して死を迎える「満足死」を提唱している。家庭を病室、診療所をナースステーションととらえ町全体を病院に見立て、家庭で天寿を全うさせることを基本理念としている。
 これは、疋田医師の献身的な行為によるものであり、一般化できないとされてきたが、最近、在宅医療で最期まで看取る診療所も増えてきた(「末期がんの方の在宅ケアデータベース」 http://www.homehospice.jp/db/db.php)。
 その一つである在宅ホスピスケア専門の組織「グループ・パリアン」は、2000年に川越厚・博美夫妻が立ち上げたものであるが、見事な在宅チーム医療を実践し、すでに500名を超える末期がん患者を自宅で看取っている。その経験を出版した『家で看取るということ』( 講談社 2005年)は、死が間近に迫った状況で人はどのような経過をたどるのか、どのようにケアをすればよいのか具体的に記している。病院死が当たり前の現代、医療者による死の看取りがおこなわれているが、本人が家で死ぬことを希望するとき、それが夢ではなく、実行してみようという勇気を与えてくれる内容が盛られている。
 こうした動きを受け、厚生労働省は8月4日、患者が終末期を自宅や地域で迎えるため、医師や看護師、薬剤師など医療関係者とケアマネジャーら介護スタッフが連携する「在宅チーム医療」の体制づくりに乗り出す方針を固めた。自宅などで亡くなる人の割合を現在の約2割から4割にすることを目指す。
 終末期の患者が安心して退院できるよう、入院していた病院の担当者と、患者が住む地域の医療・介護スタッフが「診療計画(連携パス)」を策定し医療に取り組むことを報酬面で後押しする。早ければ診療報酬と介護報酬が初めて同時に見直される2006年度改定に「地域連携パス加算」(仮称)を盛り込みたい考えだという。
 厚労省が目指す「在宅チーム医療」は、終末期の患者の要望に沿うとともに、患者の日常生活(QOL)の向上を望める。さらに、死亡前1か月間の医療費は、入院と比べると5分の1になるという試算もあり、医療費抑制の効果が期待されるとしている。
 しかし、在宅ホスピスは、病院で行われている医療行為を自宅で行えるようにするだけでなく、心のケアや日常生活のケアによって、患者が望む自分らしい最期を家で過ごすために家族とともに支援する包括的な活動である。患者が真に癒されるには、よくトレーニングされた優秀なスタッフの確保が不可欠であり、そのために必要な医療費を惜しんではならない。(TI)                              

(No22;2005/08/29)

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