No32 知ってもらいたい医学用語の基本 (1)腫瘍 その2
腫瘍名の基本ー胚葉とは、上皮とは、非上皮(間葉)とは、癌とは、肉腫とは?

 前回、腫瘍には良性と悪性とがあり、良性腫瘍と悪性腫瘍の基本的な違いを述べた。しかし実際には、現在の人間の知恵では良性か悪性か判断できない境界病変borderline lesionと呼ばれる病変も存在する。
 今回は、腫瘍というものの分類の基本について説明しよう。人間の体は受精卵からできる。1個の受精卵は母親の子宮の中で分裂を繰り返しながら子供の体を造ってゆく。その過程で、体の表面を覆う、将来は皮膚の表皮(汗腺や皮脂腺および毛を造る細胞も含む)になる外胚葉、呼吸器や消化器という管状の臓器の内面を覆う細胞層となる内胚葉およびその間隙を埋める中胚葉の三つの胚葉に属する細胞群に分かれる。外胚葉と内胚葉由来の細胞群は表面や管の内面を覆うので、これはすべて上皮性である。中胚葉からは、体内の間隙を埋める組織即ち泌尿器と生殖器となる組織も造られる。泌尿器・生殖器も中が空になっている管状の臓器であるので、中胚葉由来であっても管の内面を覆う上皮と壁を構成する非上皮性の部分からなっている。体の表面を覆う表皮と中空性の管状の臓器の内面を覆う上皮との間隙を埋める組織は中胚葉性であるが、そのうち泌尿器・生殖器の上皮を除いた組織を間葉系あるいは非上皮性と呼ぶ。
 腫瘍はこの上皮と非上皮(間葉)を基として、腫瘍細胞が何れの部分から発生したかで分類される。即ち、まづ上皮性か、非上皮性(間葉性〕かで大別し、その腫瘍が発生した基になる細胞の名前(発生母地細胞という)あるいは正常の細胞のどの細胞に似ているかで名前をつけ、分類している。
 さらに上皮性で悪性のものを癌(あるいは癌腫)という。癌のなかで扁平上皮に似ているものを扁平上皮癌と呼び、腺上皮(液状のものをつくって分泌する)に似ているものを腺癌という。良性の上皮腫瘍には乳頭腫、腺腫などがある。
 非上皮性(間葉性)で悪性のものを肉腫と呼び、発生母地細胞の名前を前に付して、線維肉腫、筋肉腫、血管肉腫、脂肪肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫などと呼ぶ。良性の非上皮性(間葉性)腫瘍には、線維腫、筋腫、血管腫、脂肪腫、骨腫、軟骨腫などがある。血管は管状の組織であるが、体の中で完全な閉鎖腔を形成していて、外界に接触することはないので、血管内面を覆う細胞を内皮細胞と呼んで、上皮とは呼ばない。血管は完全に間葉性のものである。
 何故分類をするのか? それは、それぞれの腫瘍には発生場所、発生し易い年齢層、予後などでそれぞれの特徴があるからである。

(No032n;2004/11/12) IS