医療教育情報センター

難病対策


 非常に進歩した現代の医学でもってしても治らない病気は沢山ある。その中でも特に厄介で国として取り組まなければならない病気として昭和47年にベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリトマトーデス、スモンの4疾患を難病と認定して事業を開始した。そのとき策定された難病対策要綱には「(1)原因不明、治療方針未確定であり、かつ、後遺症を残す恐れが少なくない疾病、(2)経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病」と定義されている。
 特に症例数が少なくて全国的な規模での研究が必要な疾患を「特定疾患」と定義した。最初は4疾患であったが、毎年その数が増えて、現在、特定疾患は121疾患あり、そのうちの45疾患の医療費は公費負担助成の対象となっている。
 現在、具体的な難病対策事業としては次の5つの事業が実施されている。(1)調査研究の推進:難治性疾患克服研究(66班)、(2)医療設備等の整備:重症難病患者拠点・協力病院整備、(3)医療費の自己負担の軽減:特定疾患治療研究事業(45疾患)、在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業、(4)地域にける保健医療福祉の充実・連携:難病特別対策推進事業、難病相談支援センター事業、特定疾患医療従事者研修事業、難病情報センター事業、(5)QOLの向上を目指した福祉施策の推進:難病患者等居住生活支援事業。
 特定疾患治療研究事業の推移をみると平成18年度は239億4100万円となっているが、この内で医療費の助成事業は都道府県が実施主体となり、都道府県が本事業のために支出した費用に対して、国は予算の範囲内でその2分の1を補助することになっているが、国の予算が対応できていない状況にあり、都道府県の負担が実際には約7割になっているという状態である。
 この制度が開始されてから30年が経ったが、その間に病気の原因の究明と治療法がかなり確立されたものもあり、平成18年8月に専門家を集めた特定疾患対策懇談会が開催され、その時議論されたのが、疾患の希少性という要件だった。現在認定されている疾患の内で、潰瘍性大腸炎(80,311件)、パーキンソン病(72,772件)、全身性エリテマトーデス(52,195件)の3疾患は希少性の要件を満たしていないのではないかという事が検討された。希少性の要件としては5万人未満の疾患という線が出されている。難病対策委員会では患者団体からのヒアリングを行い潰瘍性大腸炎に関する患者団体とパーキンソン病に関する患者団体の代表の人から意見を聴取したが、平成18年12月11日に「特定疾患の医療費助成の対象から潰瘍性大腸炎とパーキンソン病の軽症者を除外するとの見直し案」を提言し、厚生労働省は、12日にこれを自民党の厚生労働部会に報告している。12月16日の新聞報道によると自民、公明両党は全対象患者の治療費の公費負担を継続することを決議し、厚労省に申し入れ、厚労省は方針を転換して患者全員を救済する方向で検討に入ったということである。
 2006年度朝日社会福祉賞を受賞された日本ALS協会名誉会長の松本茂氏は難病の一つである筋萎縮性側策硬化症(ALS)の患者さんで、1987年から人工呼吸器をつけて闘病生活を送っておられる。難病の公費負担の対象外の疾患で、慢性の経過をとり種々の障害をともなう疾患も多く、福祉の充実を求める声は多い。(SF)                 

(No35;2007/01/19)

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