医療教育情報センター

No37 個人情報の保護と診療情報の提供
       

 平成17年4月から個人情報保護法が施行され、個人情報を取り扱うすべての事業者を対象として適用される。この法律が成立した背景としてコンピュータの発達・普及やこれが瞬時に国境を越え大量の情報が本人の知らない間に流出するということが挙げられる。こうしたことからOECD、EUなどでこの問題がとり組まれてきた。わが国では平成11年の住民基本台帳法改正で議論が起こり、この頃、消費者金融、人材派遣業者から数十万件規模で個人情報が勝手に流出する事件が続出し、国民の個人情報を保護する法制度を整備する動きとなり、平成15年5月に国会で成立した。
 個人情報をとり扱うという意味では医療分野にも適用され、厚生労働省では「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」を定め、日本医師会でも病院や診療所における患者の個人情報にはきわめて秘密性の高い情報が含まれているという視点から、「医療機関における個人情報の保護」と題する小冊子を発行して全医師に注意を呼びかけている(平成17年2月)。
 患者の秘密を守るということは、古来ヒポクラテスの時代から医師が守るべき倫理とされており、これは日本医師会「医師の職業倫理指針」の中にも記載されている。
 一方、診療情報の提供、医療情報の開示という考えがある。これはインフォームド・コンセントの理念に基づき良き患者医師関係を築くために医師が積極的に行っているものである。
 慢性疾患、生活習慣病の時代では、患者に病状を理解してもらい、治療に協力してもらうことが必要であり、そのためには情報提供、開示が不可欠となる。こうしたことから、厚生省(当時)、日本医師会、国立大学病院長会議などから、診療情報の提供に関する指針が相次いで出された(平成11年)。
 しかしこの診療情報の提供は、原則として患者本人に対してとしているが、実際にはいろいろ複雑な場面もみられている。本人に判断能力のない場合、家族・遺族からの要求はどの範囲とするかなど検討すべき点がある。欧米のように第三者機関(保険会社、勤務先企業など)からの開示要請に対しても一定の規準が必要である。
 個人情報保護と診療情報提供は表裏の関係にあるが、いづれも医療の質の向上のために十分注意しながら運用していくことが大切である。(NH)

(No037;2005/03/11)


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