医療教育情報センター

線維筋痛症(線維筋痛症候群)
−よく分らない、そして理解され難い全身の痛み



 病院の心療内科外来を訪れる患者さんの中に原因のよく分らない全身の痛みを訴える人が多いという(日本大学板橋病院心療内科・村上正人先生)。これらの患者さんはいろいろな診療科例えば一般内科、整形外科、リウマチ科、ペインクリニックからの紹介患者さんが多く、いろいろな検査やCT、MRIなどを行なって調べても病気が見つからず、心療内科へ紹介されてくる。ここで言う病気とは、現代の医学知識で器質的な病気、即ち客観的に人間が観察し得る(画像や検査値で)病気のことである。医学の進歩は極めて速いが、スピードが速いということと全てが解明できたということとは全く別なことである。何で生きているのかが分らない限り医学の進歩に限界はない。
 このような捉えどころの無い、しかし本人にとっては大変辛い全身の痛みを生じる病態を線維筋痛症(線維筋痛症候群)Fibromyalgia Syndromeと呼ぶようになった。線維(結合組織や神経組織)・筋という名の通り、骨、関節、内臓そのものには異常を認めない痛みである。これは単一の病気ではなく、原因はいろいろあって学問が進歩すれば幾つかの別々の病気であることが解明されてゆくであろう。現時点での人間の知恵では、原因は違っているかも知れないが同じような症状を呈する病態をひと括りにしておこうという当面の知恵である。このようなことを、医学者は屑篭(waste basket)に一時入れて置こうと表現したりする。
 何にしろ、医師が診ても客観的に異常が見つからず、かつ「痛み」は当人にしか分らないのだから、うつ病とか、大げさな性格とか、同情を求める弱い性質とか、訴えの大げさな人であるとか、80%以上が女性ということもありヒステリーではないか、などと言われてしまうこともある。
 アメリカリウマチ学会がこの病態をまとめた。診断基準は、3ヶ月以上続く全身の疼痛があって、18の圧痛点のうち11以上陽性であれば、この線維筋痛症と診断するという基準を出している。勿論、器質的疾患の無いことが前提となる。
 精神的心理的な出来事が、痛み、倦怠、筋肉のこわばりなどに関わるので、患者さんは他の人たちに理解されないと、一層辛さを増すこととなる。
 受身の現象である知覚、感覚、心理的ストレスなどを客観的に評価する術(すべ)を人間は未だ持っていない。そのような現状のなかで心療内科や心身症の専門家が活躍しているのをみると、数値では律せられない情感の世界が如何に人間生活で重要であるのかを考えさせられる。(IS)    

(No038;2007/04/13)

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