No42 知ってもらいたい医学用語の基本 (3)炎症

 鼻炎とか、胃炎とか、肺炎という医学用語は日常的に使われている。臓器や組織名の後に炎がついていると、その臓器や組織に炎症が起こっているということである。それでは「炎症」とは何か。炎症とは、何らかの原因(細菌などの微生物、高熱、低熱あるいは打撃や刃物で創傷を負うなどの物理的因子、強酸や強アルカリあるいは毒物などの化学的物資など)によって体に異変が起こると、その部位は熱く、赤くなり、腫れ、痛みを感じるようになる。これを炎症の4徴候といい、さらに、その部位の運動が障害されることが多いので、機能障害を加えて5徴候ということもある。
 鼻炎は鼻の粘膜にそれが起こっていることを表している。この炎症の基本的な概念は数世紀も前に確立されたもので、主に急性炎症の状態を表している。ウイルス感染による炎症や炎症の慢性期のものでは発熱,発赤,疼痛あるいは腫脹のいずれかを欠くことも多く、4徴候が総て揃うとは限らない。しかし、医学の進歩とともに、これらも炎症疾患に分類されるようになり、事態を複雑にしている。例えば手の創が時間が経過するに従って、赤み、腫れ、痛みなどが薄れることはよく経験される。治癒への働きが絡む時間的因子の他に、原因によっては4徴候を呈さないものもある。ウイルス感染症の一部のものや免疫異常を基盤としている疾患(例えば、急性糸球体腎炎)などはこの古典的な炎症の徴候を呈さない。言い換えれば、或る外因性あるいは内因性の原因に対する体の反応を炎症と言う疾患群として纏めていると考えてよい。
 例外もあるが、病変の経過が日数で数えられるものを急性と呼び、数ヶ月以上にわたるものを慢性と呼ぶのが一般的である。1ヶ月前後のものを亜急性と呼ぶこともある。
 細菌感染によるものが典型的であるが、一般の細菌(ブドウ状球菌、連鎖状球菌、多くの腸内細菌など)が感染すると、動脈血がその場所に集まり、赤くなり、温かくなる。血管の中の血液に含まれる蛋白質を有する液体成分が毛細血管からもれ出て、腫れがおこり、組織の酸性度が変わって痛みを感じるようになる。血管から白血球の中の好中性白血球(好中球)や単球が血管の外に出てくる。この現象を浸潤という。これらの白血球は細菌を退治する兵士のようなものである。この好中球と壊死になった細胞の集まりが「膿」である。原因因子と体との戦いとなり、体の反応が勝てば、病巣は次第に限局化され、小さくなってゆく。慢性になると、浸潤白血球は免疫を担当する次第にリンパ球や形質細胞がとって代わるようになる。
 結核、梅毒、ハンセン病では組織に特別な反応が見られる。原因となっている結核菌、梅毒トレポネマ、ハンセン菌を証明できなくても、顕微鏡下での組織反応所見で、それぞれの病気を診断できることが多い。即ち、原因菌とそれに対する組織反応が密接な関係を持っている。このような特別な炎症を特異性炎症と呼ぶ。

(No039n;2005/04/08) IS