医療教育情報センター

新薬の開発と治験の改善

 医薬品あるいは医療機器の製造販売承認申請のために実施する臨床試験を治験という。
 新しい医薬品の開発については、まず新しい医薬品となるべき化学物質の基礎研究が行われるが、一般にこの間に2〜3年を要し、費用も5〜50億円を要するとされている。有望な化学物質が候補として決定されると、動物実験が行われ、この物質に対する効果、副作用などが調べられる。同時に医薬品として工業化できるかどうかも検討されるが、こうした非臨床試験にさらに3〜5年の年月と、10〜20億円の費用が必要とされている。この段階を経たのちに、医薬品として有効性が確実視され、毒性が低いことが確認されると、臨床試験、いわゆる治験にもち込まれるのである。治験は通常、第T相試験から第V相試験まで行われるが、第T相試験は比較的少数の健康者を対象として専門施設で行われることが多い。ここでは人体におけるこの新しい医薬品の薬理作用、とくに有効性、薬物代謝、安全性、薬物相互作用などが調べられる。第U相試験では少数の患者が対象となるが、ここでは薬物が目標とする薬効に達するための用法・用量を決定する、いわゆる探索的試験が行われ、この結果を踏まえて第V相試験が行われる。第V相試験では多数の患者が対象となり、薬物の有効性と安全性を証明、確認するために行われる。ここでは長期投与試験も実施される。第T相試験から第V相試験が終了するまでに5〜10年が必要であり、5〜20億円の費用を要するといわれている。
 第V相試験までの結果が全部出揃って初めて医薬品としての製造販売承認の申請が製薬企業から厚生労働省へ出されるのである。「医薬品医療機器総合機構」で厳重な審査が行われ、承認されれば薬価が決定し、医師のもとに届くことになる。 一般に医薬品の開発から市販までの期間は15〜20年を要し、費用は1品目につき200億円を要するといわれている。そうしたことから中小の製薬企業では新しい医薬品の開発は困難であり、市場にはジェネリック医薬品として参入する結果になっている。
 近年、わが国では承認審査に時間が長くかかるという批判がでている。とくに海外では普通に使われている医薬品が、わが国では未承認で使用できないということから、政府は「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)2007」の中に新薬承認の遅れを解消するために「革新的医薬品・医療機器創出5か年戦略」を折り込んだ。そこには治験を行う拠点病院を全国で40か所に整備し、治験コーディネーター(CRC)という職種の人材を育成して治験促進を図るというのである。CRCは医師と治験依頼者(製薬企業)と被験者(患者)の間に立って治験が円滑に進むよう支援するとともに、全体を調整する役割を担うが、もともと新薬は海外で開発されたものが、わが国に導入される場合が多く、すでに海外で治験が行われているにも拘らず、再度わが国ですべての段階の臨床試験を行ってきた経緯がある。こうしたことから日本、米国、EUで3者共通の医薬品の臨床試験実施基準(GCP)が検討され、わが国では平成9年に法制化されている。
 いづれにしても新しい治療を行うためには新しい医薬品の開発は必要である。これまでのように費用がかかり、時間がかかる治験でなく、また大学病院だけでなく、一般病院や診療所医師も参加できる治験システムが必要である。同時に多くの患者が治験の意義を理解して協力してくれることも大切である。
 もち論新薬の開発を急ぐあまり、安全性が軽んじられてはいけないが、欧米に比べて新薬が患者に届くのが遅いわが国の状況は早く改善されねばならない。(NH)

(No040r;2007/07/06)

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