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胃癌に対する内視鏡治療

 プロ野球の王監督が内視鏡によって胃の切除を受けたと報道された。王監督の場合は腹腔鏡(内視鏡の一つ)を使って胃の切除を行なったものである。腹腔とはお腹の壁と臓器(胃、腸、肝臓、脾臓など)の間にある空隙のことである。従って胃の内視鏡を使ったものではない。
胃内視鏡は、口から入れ、食道を通って胃の内面(粘膜)を観察するものである。腹腔鏡は胃や腸や肝臓の外側を見るのであって、胃や腸の粘膜面を見ることはできない。
 癌腫は上皮細胞から発生した悪性腫瘍のことである。即ち胃癌は胃の上皮から発生する。上皮は粘膜に存在するのであるから、胃の内面即ち胃粘膜の表面を直接観察すれば、胃癌の初期のものを見つけることが可能となる。胃の壁は内側から粘膜、筋層、腹膜の3層から成っている。更に粘膜は、1.粘膜固有層、2.粘膜筋板、3.粘膜下層に分けられる。このうち上皮が存在しているのは粘膜固有層である。癌が粘膜内に留まっている初期の胃がんを早期胃癌と呼んでいる。この時期に手術によって切除すれば殆ど完治するが、お腹を開けて胃を切除することは過剰な治療でもある。
 そこで、内視鏡的に初期癌の存在している所を除いてしまえば合理的な治療となり、内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)が開発された。小さい早期胃癌であれば、内視鏡的に病変部に針金のような輪をかけて、癌を含んだ粘膜だけを切除する方法である。この方法であると、多くの場合、粘膜固有層ときに粘膜筋板までが切除される。しかし大きい病変であると、数回に分けて取り除く必要があので、その後、内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection:ESD)が開発された。この方法では粘膜下層を剥離して、やや大きな病変も一括して切除できるようになった。
 これらの内視鏡的切除では、切除された組織を必ず病理組織学的に検索して癌の取り残しが無いことを確認しなければならない。この方法では胃の周囲のリンパ節を取り除くことは不可能である。早期胃癌の大多数はリンパ節転移を起こしていないが、粘膜にもリンパ管が存在するので、理論的にも実際にも皆無ではない。(IS)
                           

(No042;2007/09/03)

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