医療教育情報センター

No43 尊厳死
       

 尊厳死とは人生の最後まで人としての尊厳を保って死ぬことで、治療効果が期待できなくなってからただ生命を延ばすだけの治療はせずに死を迎える消極的安楽死、あるいは寿命がきたら自然に死を迎える自然死もほぼ同義語で使われます。
 1981年世界医師会は「患者の権利に関するリスボン宣言」で「患者は尊厳のうちに死ぬ権利を持っている」と宣言しています。
 日本の政府与党は2005年2月から「尊厳死とホスピスを推進する与党議員懇談会」において、末期がんなどで治る見込みのない病気の患者が自らの意思で過剰な延命治療を中止する「尊厳死」を認める法案を議員立法で提出する方針で検討しているそうです。
 2005年3月31日に米国では15年間持続性植物状態にあったテリ・シャイボ(41歳)さんは水分・栄養補給のための胃瘻チューブを抜去してから13日後に亡くなりました。尊厳死を求める彼女の夫と延命を希望する彼女の両親との間で7年間の法廷闘争のすえ、最後には州議会や合衆国議会をも揺るがし、フロリダ州知事やブッシュ大統領まで巻き込まれましたが、最終的には夫の主張が認められて水分・栄養補給が中止されました。
 1990年の米国でテリー・シャイボさんと同様の持続性植物状態になって尊厳死を遂げたナンシー・クルーザン事件では本人の意思表示の有無が問題となり、本人が助からない状態になったときあらかじめ延命治療を希望しないという意思表示をしておくことが必要であるとの認識から、1991年に患者自己決定法が施行されました。
 1975年に世界の関心を集めたカレン・クインラン事件では持続性植物状態にあった彼女の人工呼吸器の取り外しを両親が求めた裁判では1年後にそれが認められましたが、患者は人工呼吸器をはずしたあと9年間生存して、発症から10年後になくなっています。1976年にはカリフォルニア州で自然死法が成立して、あらかじめ意思表示をしておくリビングウイルに関心が持たれるようになりました。
 末期になった時にどのような医療を希望するかを明確にした書面がありますと、医療を提供する側は、本人の意思を尊重するということで、効果の期待出来ない無益な治療はしなくてすむので有用と考えられますが、一般の人が健康な時に色々な疾患の末期を想定して、その時どのような医療を希望するか文書で表明しておくことは容易ではありません。
 認知症が進行して次第に経口摂取ができなくなってきた高齢者に対して鼻から管を入れる経管栄養あるいは直接胃にチューブを入れる胃瘻造設をするのがよいか家族に判断するように言われ、難しい決断が求められることになりますが、高齢者の認知症が進行する前の理解できる間にこのような医療行為についての判断を求める事もできません。
 どのような法律が検討されているのか分かりませんが、法律によって事前の意思表示が強制されるようなことがあってはなりません。例えばある年齢以上になり、老人保険の適応をうけるに時にはリビングウイルを書くことを義務づけられると言うようなことにはなって欲しくありません。(SF)

(No043;2005/07/15)


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