医療教育情報センター

No47 VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)        

 2005年2月23日の京都新聞に「抗生物質の効かないVRE,京都の入院患者23人が感染」という見出しの記事が出て、市民に不安を与えることになったが、事実は入院患者の膿からVREが検出され、念のため他の入院患者の検便をしたところ23人からVREを認めたもので発病しているものではなかった。その後の調査でさらに保菌者が増え67人になったことが判明し、さらに他の市中病院の入院患者からVREの保菌者が見つかった。京都府保健福祉部と京都市保健福祉局は京都大学医学研究科臨床病態検査学教授に班長を依頼してVRE研究班を結成し、京都府下の病院・介護施設におけるVRE保菌率の包括的サーベイランスをすることになった。京都府下の全ての病院(179)および老人介護福祉施設・介護保険施設(167)に本調査への参加を要請して、平成17年、18年、19年の7月から9月までの3ヶ月間、参加協力の得られた施設をその特性と規模に応じてグループに分け、グループ毎に入院・入所床数の10〜20%の数を調査対象者数として年間3000〜4000検体の収集を見込んでいる。日常診療では便検体の腸球菌の感受性試験は行わないので、VREが存在していても分からないが、今回のこのような調査で地域におけるVRE保菌率が判明することにより、更なる拡大を防止する対策が立てられる事が期待される。
 腸球菌はヒトの腸のなかに通常住んでいる菌のひとつで、ふだんはヒトと共生している。その腸球菌のうち、抗生物質のバンコマイシンが効かない種類が全世界で1986年以降に発生して問題となった。
 欧米ではMRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)感染症の治療にバンコマイシンが広く使用され、また世界の多くの国でバンコマイシンに化学構造がよく似たアボパルシンと言う抗生物質が家畜の肥育促進剤としてエサに混ぜて使用され、家畜の腸内でVREが発生してそれが人に広がったことも考えられる。日本では1997年よりアボパルシンの使用は禁止され、またVREは加熱(70℃1分以上)すれば死滅するので、鶏肉は十分に加熱調理してから食べるようにすることが望ましい。
 健康であれば体内にVREが生息していても発病することはないが、免疫機能が低下し抵抗力が弱り、腸以外の部位に感染が起こると重篤な感染症(敗血症、尿路感染症など)を発病して、ほとんどの抗生剤が無効であり致命的となるために恐れられている。
 京都市内の一病院内でVREの保菌者が多数発見されたことは、他の施設や病院にもある可能性があり、どこから広がったのかは不明であるが、今回計画されている包括的サーベイランスの結果さらに多くのVRE保菌者が見つかれば、発病者が出る前に対策を立てる必要がある。病院や施設など感染の可能性のある場所では、日常のケアの中で感染対策の基本である流水による手洗いや速乾性手指消毒薬の使用を徹底して、VREの拡大を防止するように努めなければならない。(SF)

(No047;2005/09/21)


戻る