医療教育情報センター

脳バイパス手術

 EC-IC(external-internal carotid:外頚・内頸動脈)バイパス手術とも言われ、脳神経外科の手術に顕微鏡が導入された頃、1969年にスイスのヤサギル教授により開発され、その後世界的に普及した手術である。これは脳への血流が障害されて生ずる症状を、頭蓋の外側の動脈を使って血流障害を改善させて、症状を悪化させないことを目的として行われるものである。手術の対象は頭蓋内の脳へ血液を供給する内頚動脈に狭窄或いは閉塞を認める人に、血流障害による症状、たとえば運動麻痺、感覚障害、言語障害などが発症するのを予防する目的で、頭蓋外の血管である外頚動脈の枝の浅側頭動脈を内頚動脈から分岐した中大脳動脈が脳表面に出ている部位で吻合する手術で、直径1mm以下の細い動脈を顕微鏡で拡大して、毛髪よりも細い糸で縫合する。この手術は小動物のラットの頚動脈を使って技術を修得することが出来るので、手術後の吻合部開存率は良くなったが、当初に期待されたほどの臨床的効果が見られないことが指摘された。
 そこでカナダのバーネット教授を中心に国際的な研究が行われ、1985年にその結果が発表されたが、手術をしても、しない場合に比べて症状発現の程度に有意差がないという結論であった。その後米国ではこの手術はメディケイド・メディケアの適応からはずされたこともあり、脳バイパス手術はあまり行われなくなった。しかし脳神経外科医の間では手術が有効であった例も経験され、日本では岩手医科大学の小川教授が中心となって、手術適応を厳密にすれば効果が期待できることを実証する目的で、全国から参加を求めて共同研究JET(Japanese EC-IC bypass trial)スタディが開始された。2002年に中間報告が出されたが、まだ最終的結論にまではなってないようである。この研究は最近の診断技術の進歩による脳循環検査のSPECT(single photon emission computed tomography)を用いて、脳の局所の血流低下を定量的に測定し、これに薬剤による負荷を加えて脳循環予備脳を測定して、血行再建手術の効果が期待できるか否かを判定して、手術適応を考えようとしている。(SF)


EC-ICバイパス手術 顕微鏡手術 脳血流障害 SPECT JET study
(No048;2008/03/21)

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