(No050;2008/05/09)

医療教育情報センター

スキルミックスとチーム医療

 医療が崩壊する原因の一つに、病院に勤務する働き盛りの医師がどんどん辞めていき、開業するケースが多くなっていることがある。辞める第一の理由に多忙があり、外来患者の多さや診療行為以外の手続きや書類が増えたことが負担の増加に関係しているといわれる。これは他職種でも実行可能な仕事が医師に集中しすぎていることでもある。
 厚生労働省は深刻化する勤務医不足対策の一環として、医師法に抵触しない範囲で「医師でなくとも可能な業務」を見直し、「医師と他の医療従事者の役割分担の推進」を求めている。
 一例として、医師と事務職員の役割分担について、医師が最終的に確認し署名することを条件に、事務職員が診断書や処方箋の記載を代行できるとし、本年4月の診療報酬改定からメデイカルクラークを導入した。
 こうした動きは、スキルミックス(Skill Mix、多職種協働)と呼ばれ注目されている。スキルミックスは1990年代に医師不足、看護師不足に悩んだOECD諸国で、その養成に時間とコストがかかるこれら職種のありかたや機能が議論された結果、生まれた概念である。
 スキルミクスは単なる役割分担ではなく、医療チーム内における権限と責任の委譲を伴う。もともとは看護職における職種混合を意味し、看護師、准看護師、看護助手というように、資格と能力が異なるスタッフを混合配置することを指していた。
 最近では、その概念が拡張されて、ひろく多職種のチーム内部における職種混合のあり方や職種間の権限委譲・代替、新たな職能の新設などを示す概念となっている。
 「スキルミックスとチーム医療」については、2008年2月8日東京都主催の医療従事者ネットワーク講演会で武藤正樹氏(国際医療福祉大学大学院教授)が講演されたスライドが公開されており参考になる (http://muto.homeip.net/backup/lecture/20080209a.pdf)
 厚生労働省の桝添大臣はスキルミックスの導入に対して前向きであり、厚労省の「安心と希望の医療確保ビジョン」会議において、関連する医療従事者から積極的にヒアリングを行っている。
 チーム医療の必要性については、すでに本欄でも紹介したが(「チーム医療と意識改革」)、我が国では法的にほとんどの医療行為が「医師の指示のもと」でなければ行ってはいけないとされている。これを医療従事者の判断で実施できるように裁量権を拡大すれば医師の業務負担の軽減につながることは確かである。しかし、医療従事者の能力アップや責任の問題があり、教育・研修の体制が整ってはじめて質の担保と国民の理解を得ることにつながる。
 世界に誇る医療制度を維持し、真に医療サービスの向上に繋げるためには、医療関連者だけでなく、国民や患者代表を含めて広く意見を求め、スキルミックスを早急に拡大する必要がある。(TI)


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