医療教育情報センター

新しい臨床研修医制度は本来の目的を達成しつつあるか

 大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格した医師は卒業後2年間の研修が義務化された。新制度での修了者は既に誕生し、この制度の本来の目的が達成されているかどうかの調査が成された(日本内科学会雑誌96巻2007年12月号)。その結果で見ると、多くの分野で以前の制度で研修を受けた人(初めから専門領域で研修ができる制度)と新制度で研修を受けた人を比べると、殆ど全ての調査項目で著明な向上が見られている。特に自分で出来るようになったという技量面での評価が顕著に向上している。
新研修医制度の基本的理念は「臨床研修は、医師が、医師としての人格を涵養し、将来専門とする分野に関わらず、医学及び医療の果たすべき社会的役割を認識しつつ、一般的な診療において頻繁に関わる負傷又は疾病に適切に対応できるよう、基本的な診療能力を身につける」として、平成16年4月から必修化されたものである。即ち、医師は将来どの専門領域に進もうとも、まず医療に関する統合的、包括的な知識、技量、態度を身につける必要があり、医学・医療全般にわたる基本的な事柄を経験し、学ぶことが将来の専門のためにも重要なことであるとの理念から生まれたものである。
 筆者は、日本医師会の企画する研修指導医に対して行う指導の理念や方法などを訓練するワークショップをお手伝いする機会がある。そのときに或る病院の整形外科部長の要職にある指導医が言っていたことを紹介したい。整形外科は骨・関節・筋肉などの疾患を対象としているが、整形外科の患者さんのなかで糖尿病をもっていた方がいて、その糖尿病のコントロールを最も適切にできたのは整形外科専門医ではなく、2年目の研修医であったとのことである。糖尿病には様々な合併症があり、その症状と障害は千差万別であり、病気の期間は長く、根本的に完治する方法を現在の医学はもっていない。糖尿病を上手くコントロールしながら、より幸せに生活ができるように支援する必要がある。これこそ全身的、包括的な考え方が必要なのである。
 現在、大学からの医師引き上げが起こり、いろいろな病院で医師不足が叫ばれているが、一時的な副作用であると思われる。新研修医制度は本来の目的を達成しつつあるようだ。若い人たちは効果的で、効率的な臨床研修を求めて適切な研修病院を探しているのである。将来は学閥の解消や博士制度の見直しへと進むのではないか。(IS


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(No051r;2008/06/06)

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