医療教育情報センター

スローメディシン -Slow Medicine-

 アメリカのファーストフードに対抗してイタリアを中心にスローフード運動が始められ、スローライフが見直されているようである。急性期医療が主流を占めている現代医療のなかでスローメディシンを実践しているという記事が5月5日付のニュヨークタイムス紙にでた。ニューハンプシヤー州のハノーバーで、ダートマス医学校と提携してスローメディシンの実験の場となっている引退者共同体の事例が紹介されている。その事例は86歳の男性で心臓に持病があり、消化器の障害、アルツハイマー病の初期の診断を受け、新たに咽頭部にがんの疑いがあると専門医から告げられた患者について、その夫人が実践看護師と相談して今後どのような検査、治療を選択するか時間をかけて検討するというのである。
 提唱者であるD.マックロウ医師の著書「私の母、あなたの母―スローメディシンの採用;あなたの愛する年老いた人に慈悲深く接するケア」には次のように述べられている。
 スローメディシンは家族を中心として、限られた資源を共同、協調、維持の慣習によって作り出される、より費用のかからない方法である。これは標準化された医学的侵襲についてもより賢明な意思決定ができるようにするものであり、お年寄りとその家族にとってより良い生活をするための特別な接近法である。スローメディシンは患者の年齢が最高に達した時の長さと生活の質を最大のニーズ、最強の基礎にして日常の注意事項として採用される。これは死ぬための準備の計画ではなく、残された時間に配慮して、よく生きることを理解した計画である。
 人生の晩年期を8つの時点に分け、それぞれの対応を、1)安定:85歳の母、独居生活、2)妥協、3)重大局面、4)回復、5)衰弱、6)死の前兆、7)死:92歳で最期はホスピスに入所して死亡、8)悲しみと遺産、として検討している。
 各時期で家族が中心となり、それぞれの状況に適した人が参加して、チームとして本人にとって最適な方法を充分時間をかけて検討し対応する。患者が急変した時でも、高齢で多くの疾患を抱えてそれが末期であれば、あわてて救急車で病院へ運ぶのではなく、あらかじめチームで計画していたケアに従って、本人や家族にとって最適の場所で最期を看取るようにするというのである。
 後期高齢者の終末期医療は疾患により、また個人によって非常に異なり、家族の思いもそれぞれ違うので、いろいろな場面に対応できるような選択肢を提供し、充分時間をかけて検討する必要があると思われる。(SF



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(No052r;2008/08/05)

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