医療教育情報センター

認知症と緩和ケア

   「高齢者介護研究会報告書『2015年の高齢者介護』」(平成15年(2003))」によると、なんらかの介護・支援を必要とし、かつ認知症をもつ高齢者は、平成27年(2015)までに250万人、平成37年(2025)には323万人と推計されている。これからの高齢者介護においては、身体ケアのみではなく、認知症に対応したケアも標準として位置づけていくことの必要性が指摘されている。
 65歳以上の人口が全人口の占める率が7%から14%に達するまでの期間で高齢化の速度を定義すると、日本では7%に達したのが1970年であったが、24年後の1994年には14%に達した。日本では高齢化のスピードが速く、対策が後手に回ったといわれている。1950年代に高齢化率がすでに10%を超えていたスウェーデンでは、日本と比べ早くから認知症が社会問題化した(スウェーデンでは1890年に7%、1950年に10%、1972年に14%と、82年かかっている)。そのためスウェーデンでは長年にわたって認知症ケアの開発に取り組み、世界に先駆けグループホームなどの少人数ケアの手法などを生み出している。
 認知症の対応として、医療の立場では脳の変化を知るために、その症状のさまざまな評価が行われている。しかし介護や看護の現場では、脳の変化があるかないか、点数が何点かということよりも、本人の現在の生活のありようをみるほうが重要である。認知症の高齢者の介護がめざすものは、落ち着いた生活づくりである。認知症の症状は、認知機能障害といわれる中核的な症状(記憶障害や理解力の低下など)と認知機能障害に伴って起こる行動心理的症状(徘徊や妄想、不潔行為など)、いわゆる周辺症状の2つに分類される。近年、中核症状は改善が難しいが、周辺症状は介護する側の対応次第で、軽減できることが明らかになってきている。
 スウェーデンでは認知症のケアを、緩和ケアの理念に基づいて行っている。1990年代にベック・フリース医師は、がん患者に対する緩和ケア理念が認知症の症状緩和にも応用できることに気づき、「認知症緩和ケア」の理念を確立した。認知症の高齢者のQOL(人生の質)は「症状のコントロール」「家族支援」「チームワーク」「コミュニケーション」の4側面からの支援により、保証されるという考え方である。
 そして症状のコントロールの具体的方法に、「タクティールケア」と呼ばれるマッサージ法を推奨している。タクティールとはラテン語の「タクティリス」に由来する言葉で、「触れる」という意味である。スウェーデンでは1800年代からマッサージを治療の手段として用いてきた歴史がある。1960年代に未熟児に対する「タッチケア」の成果(母子や親子の関係を深める)を明らかにしたのもスウェーデンの看護師達であった。タクティールケアはオイルをつけた手で、手、足、背中全体を柔らかく包むようにゆっくりなでるように身体に触れることで、不安感、興奮状態などを緩和するといわれている。 (EN



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(No060r;2009/04/13)

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