医療教育情報センター

No64 恐るべき移植臓器の売買        

 かねてから心配されていた移植臓器の売買が明るみに出た。誠に嘆かわしい、恐ろしい事件が発生したものである。
 以前に東南アジアなどでこうした事件があるらしいという噂は耳にしたことがあり、また昨年の世界医師会理事会でも、中国で死刑囚からの臓器移植が問題となったが、今回はわが国で行われ、臓器移植法違反により被疑者が逮捕されたのである。
 問題の事件は愛媛県宇和島徳州会病院で、移植を受けたのは糖尿病性腎症の男性患者、腎臓を提供した知人女性は、見返りとして現金30万円と150万円相当の乗用車を貰ったという。レシピエントである男性患者の内縁の妻は、ドナーとなった女性に借金をしており、腎臓を提供してくれれば「300万円上乗せして返済する」と言って依頼したという。
 腎臓移植により、人命の延長が図られることは素晴らしいことである。しかし医学の進歩は、常に医の倫理と背中合わせにある。それだから臓器移植法があり、各学会に倫理指針があるのである。人間の臓器が売買されて許される筈がない。
 こういう場合、手術を担当する医師にも問題がある。手術を行った医師は「親族だと思った」と患者の申し出を鵜呑みにしたそうだが、日本移植学会の倫理指針には「臓器提供者は親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)に限定する。親族でない場合は、実施医療機関の倫理委員会の承認を受ける。(後略)」とあるのだから、慎重な対応があって当然であったらう。そのうえ同病院には倫理委員会もなかった。
 今回の事件を契機として、マスメディアも臓器移植における臓器売買の問題をとりあげているが、10月8日付読売新聞には、札幌の男性が1300万円を支払って中国で腎・肝同時移植を受けた記事が掲載されていた。中国での移植手術には危険も大きく、また大半は死刑囚からの摘出だと報道されている。
 人間、誰もが病気を克服したい、元気になりたい、ということはその通りである。しかしお金で他人の臓器を買うことが、本当に許されてよいのか。それでも生きたいのか。
 一人ひとりがよく考えねばならない問題である。(NH)

(No064;2006/10/20)


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