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腰痛への新しいアプローチ −まず非侵襲的方法―

   腰痛は高齢化社会でますますその重要性を増しており、受診の主な原因になっている。米国疼痛学会は新しい腰痛に関する診療ガイドラインを発表した。これによると、(1)手術などの介入的方法よりも内科治療、リハビリテーションなどの非侵襲的治療法を行うこと、(2)医療者と患者が共同で意思決定することの重要性が強調されている。
 (1)介入的方法を適応とする(患者で行う)エビデンス(科学的根拠)は、錯綜しているか、希弱、または存在しないかのいずれかであった。
 (2)多くの治療法では、リスク(危険、副作用)や費用、負担に照らした場合の便益(治療効果)があいまいだから、患者と医療者の共同作業による意思決定が必要である。あらゆる治療選択肢について、患者の生活に及ぶ影響を総合的に説明し、治療法を決定する際には患者を完全参加させることが重要だと強調している。 
 ガイドラインで推奨された内容は以下の通りである。
@ 疼痛誘発椎間板造影は行わない。
A 非神経根性の腰痛患者が通常の治療法に反応しない場合は、認知あるいは行動面
  に重点を置いた学際的な集中的リハビリテーションを考慮する。
B 持続性の非神経根性腰痛患者に対しては椎間関節へのコルチコステロイド注射、増
  殖療法、椎間板内コルチコステオリド注射は行わない。
C 非神経根性腰痛患者や、一般的な脊髄変性、持続性で日常生活に支障を来たすほ
  どの症状を呈する患者は、手術リスクと便益を話し合い、リハビリテーションについ
  ても同様に有効な選択肢であることを示し、共同で意思決定を行う。
D 非神経根性腰痛や一般的な脊髄変性、持続性で日常生活に支障を来たすほどの
  症状を呈する患者に対する椎間板置換術は行わない。
E 椎間板ヘルニアにより持続性の神経根症を呈する患者とは、硬膜外ステロイド注射
  のリスクと便益に関して話し合い、特に長期便益は小さいというエビデンスがあるこ
  とを説明し、共同で意思決定を行う。
F 椎間板ヘルニアによる持続性で日常生活に支障を来たすほどの神経根症または同
  様の強さの下肢疼痛を有する患者とは、手術のリスクと便益を話し合い、中等度の
  便益が得られるが効果は時間の経過とともに消失していくことを説明し、共同で意思
  決定を行う。
G 椎間板ヘルニア手術後、持続性で日常生活に支障を来たすほどの神経根痛を示す
  が神経根圧迫が確認されない患者とは、脊髄刺激療法のリスクと便益を話し合い、
  刺激装置植え込み後に合併症が高率で発生することを説明し、共同で意思決定を
  行う。
 全ての腰痛患者は活動的であり続けるべきこと、セルフケアなどの介入方法について正直に主治医に話すべきである。
 エビデンスで便益が証明されている非侵襲的治療法をまず施行し、介入的方法や手術はその後に考えるべきである。
 診断に関して基礎疾患として神経学的障害や脊髄障害があると疑われる患者でなければ、]線撮影をルーチンで施行することは避ける。 (SS

(No065r;2009/09/30)


非侵襲的治療法 患者参加 意思決定 介入的方法 リハビリテーション

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