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がんペプチドワクチン療法

 がんの三大治療法として、手術、抗がん剤による化学療法、放射線治療があるが、第四の治療法である免疫療法の一つとして、新しい原理に基づく「がんペプチドワクチン療法」が注目を浴びている(医学のあゆみ 230:121,2009)。
 がんの免疫療法の歴史は古く、100年以上前に遡る。重症の丹毒発作を2回起こした後、肉腫が完治した症例にヒントを得て、連鎖球菌をがん患者に注射する治療によってがんを消失させることに成功した報告が科学的な研究の最初である。
 以後、試みられている免疫療法は、がんに直接働きかけるのではなく、人がもともと持っている免疫細胞(リンパ球)を人工的に活性化させることによりがんを治療しようとするものである。
 これに対して東京大学医科学研究所の中村祐輔教授(遺伝医学)が開発中の「がんペプチドワクチン療法」は、患者自身の免疫力でがん細胞のみを攻撃するもので従来の免疫療法と異なる。がん細胞の表面にあるペプチド(たんぱく質の断片)という目印(がん抗原)をワクチンとして体内に投与すると、がん抗原に反応するリンパ球が活性化されて、がん細胞だけを殺すことが期待できる。この方法の場合、正常な細胞を攻撃しないため副作用も少ない。  食道がんや膵臓がんなどに対して、これまでに行われた臨床研究の結果は、ワクチンを受けた人の4割でがんの進行が止まり、2割でがんが小さくなったという。これは、これまでの抗がん剤と同等以上の効果であり、副作用も抗がん剤より極めて軽い。
 こうした成果を受けて「がんペプチドワクチン療法」の安全性や有効性を検証する臨床研究は、東京大学医科学研究所、山梨大学、久留米大学、福島県立医科大学、和歌山県立医科大学など大学病院を中心に全国で広がりつつある。2006年現在では、700人を超えるがん患者が登録され、各医療機関でこの治療が試みられている。
 「がんペプチドワクチン療法」が期待できるのは、がんペプチド抗原を有し、ワクチンにリンパ球が反応する場合に限られるが、難治性のすい臓がんや、治療法がなくなった末期のがん患者からは、手術、放射線、抗がん剤に次ぐ第四の治療法としての大きな期待が寄せられている。(TI

(No068r;2009/12/18)


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