-->

医療教育情報センター

虚弱症候群

 高齢者は同じ年齢であっても個人差が大きく、特に病気になりやすくて回復しにくい人を虚弱という概念でとらえて、その対策を立てるために判定基準が提唱されている。
 2001年米国のFriedらはBaltimore住民の心臓血管健康調査の際、@歩行速度低下、A握力低下、B疲労困憊、C体重減少、Dエネルギー消費低下の5つの項目中3つ以上あるものを虚弱の判定基準として、5317人の65歳以上の高齢者を対象に調査した結果65歳以上で6.9%、80歳以上では30%が虚弱と判定され、4年間の追跡調査で7%の人が虚弱となることを報告している。虚弱者の中で慢性疾患を持っていない人はわずかに9%であるが、一方、慢性疾患2つ以上持っている人の90%は虚弱ではないということも分かった。
 虚弱は複数の身体システムの進行性に見られる生理学的減退で、機能消失や、生理的予備の消失、疾患や死亡に対する脆弱性の増加によって示される。一般的に見られる症状や徴候としては倦怠感、体重減少、筋力低下、進行性機能低下などであり、これに認知能力の低下やうつ状態を加えることもある。高齢者にみられる虚弱症候群は複数の病的過程の結果であると考えられ、加齢ホルモンカスケード(閉経、男性ホルモン停止、成長ホルモン停止、副腎停止)と免疫系の変化のために、ストレッサーに対する反応を効果的に調整し、有効にすることができなくなることによるとされている。
 虚弱高齢者では内分泌系の変化により筋肉量と筋力の急激な低下がみられる。女性では閉経後急速に性ホルモンレベルが減少し、男性はテストステロンの低下が見られるが、急激ではない。成長ホルモンも年齢と共に減少し、糖代謝にも影響を与える。多くのホルモンやVDを含む栄養素も筋力維持に関係している。
 虚弱症候群に炎症が影響しているのではないかと疑われる炎症マーカー、インターロイキン(IL)6とC反応蛋白(CRP)の血清中レベルの増加がみられる。慢性の炎症は血液凝固系にも影響を与えると考えられ、また貧血や凝固機能の亢進がみられる。
 虚弱に対する対策として積極的な運動や太極拳なども勧められ、サプリメンなども試みられているが、確かな結果は明らかにされていない。(SF

(No075r;2010/09/24)


虚弱 慢性疾患 性ホルモン 炎症マーカー 高齢者

新しい診療理念・バックナンバー