医療教育情報センター

No77 高齢ドライバーと認知症        

 高齢者の運転が関係する交通事故が急増しており、平成16年度の全国の交通事故死者数7358人のうち、高齢者の交通事故による死亡は3046人で4割を占める。
 高齢ドライバーは免許取得後20年、30年と運転してきたベテランであり、その多くは無事故歴を誇る優良ドライバーでもある。当然、自分の運転に自信と誇りを持っている。しかし、高齢者の運転が原因で起きた人身事故は年間8万9千件もあり、この10年で3倍近くに増えた。
 高齢ドライバーの事故は、その50%が交差点で起きており、しかも出会い頭事故が多い。高齢者は複数の情報を処理する能力が低下している。信号、対向車、歩行者など同時に判断しなければならない交差点の右折などで事故が多発している。加齢に伴う身体機能の低下は、視力、視野、反射神経、瞬時の判断力、体力などに及び、結果としてハンドルやブレーキの操作が遅くなる。一番の問題は、こうした現実を高齢者本人が自覚していないことである。
 交通心理学が専門の蓮花一己教授によると、「高齢者は運転技能が衰えているのに、自分では『安全に運転している』と自己評価が高い傾向にある」と指摘する。教習所で、28〜86歳の198人の運転技能を調べたところ、中年層は指導員評価と大差がないが、の自己評価は満点近くで、指導員の評価との差は40点近かった。
 警察庁によると、65歳以上の認知症の運転免許保有者数は全国で約30万人と推定されているが、認知症ドライバーの免許取り消しは平成18年までで257件にとどまっている。したがって、事故を頻繁に起こしている高齢者の中には軽い認知症患者が混じっている可能性がある。
 こうしたことを背景に、高齢ドライバー対策を強化した道路交通法改正案が今国会に提案され、4月18日に参議院本会議を賛成多数で通過した。75歳以上の高齢運転者は、免許証更新期間が満了する6カ月以内に、認知機能に関する簡易検査を受け、検査の結果が一定の基準に該当した場合は適性検査を実施する。施行は、改正法の公布から2年以内となっている。
 高齢ドライバーは、認知症の有無にかかわらず、加齢に伴う身体機能の低下と運転能力の衰えを自覚し、能力に合った安全運転を心がけるとともに、危なっかしい運転をするようになって、周りから「そろそろ車はやめたほうがいい」と忠告されたら、意地をはらずに運転をやめる勇気を持ちたいものである。(TI)
(No077;2007/06/11)


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