医療教育情報センター

高齢者のケアサービスにおけるICF(国際生活機能分類)の活用

 日本のみならず,世界中で高齢者人口は急増している。高齢者は一般に,罹患率,医療・介護サービスの利用率が高くなり,一人の人に多職種が関わる頻度が高くなる。サービスの質を高めるためには,医師,歯科医師,看護師,薬剤師,理学療法士,作業療法士,栄養士,社会福祉士,介護福祉士などの多職種の連携が重要なポイントとなる。
 多職種が連携して協働するためには,情報の共有が必要であるといわれている。しかし情報は共有できてもその内容については互いに理解しにくいものもある。連携にとって大切なことは「共通のものの考え方,捉え方」をもつということである。
 ICF(国際生活機能分類)とは,2001年にWHO(世界保健機関)の総会で採択されたものであり,正式名称は「生活機能・障害・健康の国際分類(International Classification of Functioning , Disability and Health)」である。1980年に発表したWHO国際障害分類を改定したものである。健康な生活を営んでいる人間とはどのような機能を発揮している状態にあるのかということと,それに関連するものを系統的に分類したものである。WHOにはICD-10(国際疾病分類)という病気に関する分類もある。健康とは,単に病気がないということではなく,生活機能全体が高い水準にある状態を示す状態であるので,高齢者等への健康へのサービスを考える場合には,ICDとICFの両者を併用して,病気と生活機能の両面からみていく事が望ましい。
 ICFの構成要素は次のとおりである。ICFでは,生活機能を「人が生きること」の全体を示すものとし,「心身機能・構造」「活動」「参加」の3つのレベルに分けている。人間は生物でもある。そのレベルで「生きる」ことを捉えてものが「心身機能・構造」である。「活動」とは,生活上の目的をもった行為であり,顔を洗ったり食事をしたりといった日常生活動作(ADL)から家事,仕事,人との交流,趣味,スポーツなどの多くの行為が含まれる。さらに,これらの「活動」を「できる活動」(能力)と「している活動」(実行状況)とに分けている。「参加」とは,人生のさまざまな状況に関与したり,役割を果たすことである。たとえば主婦の役割,仕事上の役割,家族の一員としての役割,地域社会での役割に参加することである。
 またICFでは生活機能の発揮の仕方や障害と相互に影響を及ぼしあう「背景因子」を導入し,その背景因子に「環境因子」と「個人因子」を挙げている。「環境因子」では物的な環境だけではなく,人的な環境,社会意識としての環境,制度的な環境というように,広く環境を捉えている。「個人因子」とは個人の人生や生活における背景であり,性別,年齢,健康状態,体力,教育歴,職業歴,性格,心理的資質などが含まれる。
 ICFは,「分類」という名のために,符号や番号を覚えて使いこなすことと誤解されやすいが,高齢者の健康状態と生活機能(心身機能・構造,活動,参加),これらに影響を及ぼす環境因子と個人因子を実際のケースに適用し,それによってケースを全人的に理解することがICF活用の基本姿勢である。訪問看護等の現場で,他職種間の共通言語をしてのICF活用が始まっている。(EN

(No077r;2010/12/03)


ICF(国際生活機能分類) 生活機能 心身機能・構造 活動 参加 環境因子 個人因子

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