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No81 「総合科」新設と総合医の育成・認定

 厚生労働省は5月1日、新たな診療科として内科、小児科などの幅広い診療能力を持ち、患者の初期診療に当たる「総合科」(仮称)を創設する方針を固めた。
 同省が総合科の導入を図る背景には、高齢社会で増える生活習慣病の患者や高齢の患者に対応する医療には、患者の心理的・社会的な側面も理解しながら“総合的に診療する医師”が求められていることや、患者が病気になった時どの診療科にかかってよいのかよく分からないということがある。
 総合科の医師は、患者の訴えをよく聞き、ありふれた複数の疾患を適切に診療し、専門診療を必要とするときは専門医に紹介する。在宅医療や終末期医療にも対応することにより、地域医療を支える存在となることが期待されている。
 日本の医療現場は、日常の診療を行う診療所(開業医)と、専門診療と入院患者の診療に当たる病院の役割分担があいまいであり、軽症患者まで専門性の高い病院に押し寄せる。総合科の導入により病院の混雑を緩和し、過剰勤務で病院を辞めるケースも多いとされる勤務医の偏在や不足を改善させる狙いもある。
 しかしながら総合科の導入には難問が山積している。なかでも総合科で診療にあたる「総合医」の診療能力を認定する問題と、これまで医師免許さえあれば開業するとき何かでも標榜できている診療科表示を制限する問題が大きい。この点については、本欄でもすでに取り上げている(医療ニュースNo076)。
 はたして、日本医師会は6月9日、厚労省の総合科創設の方針に対し「どんな医療機関でも自由に受診できるフリーアクセスの機会を患者から奪うことになる。同省のねらいは医療費抑制である」として断固反対の見解を発表した。
 一方、こうした動きとは別に、日本医師会は総合的な診療能力をもった医師の養成は重要な課題であるとし、総合診療と関係が深い日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会、日本家庭医療学会の3学会と共同で総合医の育成プログラムと認定に向けた作業をすでに進めている。
 総合的な診療能力を持つ医師が今後の日本の医療に必要だという方向性については、日本医師会と厚労省は一致している。総合医育成の中心となる関連3学会は将来的に統合し1つの組織として活動することがほぼ決まっている。一方、患者も意識改革が必要である。風邪などでいきなり、先端医療を担う大病院を受診するのはおかしい。近くに自分の「かかりつけ医」を持つ努力が求められる。
 今こそ、日本の医療を良くする第一歩となる「総合科」(仮称)の実現に向け厚労省、医師会、関係学会、国民はそれぞれの思惑にこだわらず足並みをそろえるときである。(TI)

(No081;2007/08/17)


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