医療教育情報センター

廃用症候群

 廃用症候群とは、動かないことによって起こる症候(症状)群のことである。東日本大震災により多くの方が避難所で過ごされているが、この中であまり動かないで日々を過ごされている高齢者などで発生が危惧されている。一般には、急性の病気で寝たきりで安静の期間が長いことで起こる。たとえば脳卒中で何週間か寝たきりになっていると、動かせない麻痺側の筋萎縮ばかりでなく、動かせる側(健側)の筋萎縮も起きてくる。この様に麻痺やギプス固定などによる不動、骨や関節の疾患や各種の痛みによる不動などで起きる廃用性筋萎縮は、筋脱力はなく筋萎縮が目立つのが特徴である。
 さらに骨に力が加わらないことにより骨粗しょう症が進行する。このために骨折しやすくなり、かつ骨膜由来のいろいろな部分の痛みが起こる。
 神経系の障害としては、姿勢の変化に対して自律神経系の反射機能が衰えて、起立性低血圧が起きやすくなったりする。これは起き上がったりした際に意識を失ったり、気が遠くなったりする。さらに何もしないで長期間寝ていたりすると大脳への刺激が減り、認知症が起きる。
 姿勢の変化や運動によって,心肺機能が予備力を発揮して運動ができるように、筋肉や心臓などへの充分な血流と動脈の酸素濃度を保つが、不動が続くことによりその予備力が低下して、こうした姿勢の変化や運動が困難になる。運動に際して心臓への自律神経系の反射で心拍数が増加する反射も衰える。
 不動が続いて下肢の深部の静脈に血栓(血の塊)ができやすくなり、この塊の一部がちぎれて静脈を流れて肺動脈に引っかかり肺梗塞を起こすことは、エコノミー症候群とも言われ有名になった。肺梗塞は時に致命的である。狭い車の中などで下肢を動かさないで長い時間を過ごしたりして起こる。飛行機で狭いエコノミークラスの椅子に座ったまま長距離を飛び、空港で歩き出した時に塊が肺に飛び、梗塞を起こす。
 血液の流れが遅くなり、脳や心臓で梗塞が起こりやすくなって、脳卒中や心筋梗塞が起きる。
 寝たままでは体重がかかる背部、仙骨部、臀部、踵などに皮膚の血流が途絶して床ずれ(褥創)ができ易くなる。
 不動は寝不足、食欲不振、便秘、尿路感染(膀胱炎、腎盂炎)、血圧の上昇、血糖の上昇などが起こりやすくなる。寝ていると肺炎を合併しやすく、一般にそれが治りにくくなる。
 廃用症候群の予防は動くように勧めることや、体位の変換を頻回にすることである。治療は体位の変換、受動的運動、自発運動、その他対症的治療を行う。(SS

(No082r;2011/05/06)


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