医療教育情報センター

No83 集団検診からはずされるのか? PSA検査


 前立腺がんの早期発見に有効であるとされているPSA検査(Prostate Specific Antigen)について、厚労省研究班は「集団検診で実施することの意義が認められないので実施は今後奨められない」という方針を示した。
 一方、日本泌尿器科学会はこの方針に反対し「50歳以上の男性を対象にしたPSA検査による検診で前立腺がんが見つかっている」と主張し、泌尿器科学会独自の指針を作るという。
 PSAは精漿中に含まれる糖蛋白で、正常や肥大でも前立腺組織で分泌されているが、前立腺がんではPSAが血液中に大量に漏出するのでその値が高くなり、前立腺がんの診断に使われている。このように「がん」で血液中に増える物質を「腫瘍マーカー」と呼び、採血だけで「がん」が診断できるので普及してきた。しかし腫瘍マーカーには多くの種類があり、ある腫瘍マーカーが高いからといって、特定のがんを診断することは出来ないので、その使用には制約が加えられている。このうち例えば、AFPという腫瘍マーカーが高いときは殆どの場合で原発性肝がん、CA15−3では原発性乳がん(進行がん)、PSAでは前立腺がんとして発見することができる。勿論、確定するためには他の検査、とくに画像検査や病理組織検査などを行う。
 今回、厚労省研究班がPSAを検診で推奨できないとした理由は、検診での早期発見による死亡率の減少が、多くの文献的考察から検証されなかったこと、また検診で前立腺がんと診断した例の約30〜80%は治療の必要のない例であったことなどを挙げている。これに対して泌尿器科学会は、現にPSA検診の普及率の高い米国では実際に前立腺がんの死亡率が減少していること、PSA検診を受けると進行がんが減少していることなどを挙げ反論している。 それにしても厚労省研究班の構成メンバーには当然、泌尿器科医、がん研究者など、その道の権威者がいるのであるから、こうした指針を出す前に何故学会と議論、検討をしなかったのか、縦割り的発想で指針を出したことに問題を感じる。
 いずれの言い分が医学的に正しいかは専門家同士の今後の更なる検討が必要であるが、採血という簡単な方法で前立腺がんを発見できる検査を厚労省が今見直そうとしていることはやや理解に苦しむ。現在、全国7割の市町村はPSA検査を集団検診事業として実施しているが、今回の方針に従えば今後事業をどうするか対応が迫られ混乱は避けられないだろう。
 因みに前立腺がんは男性で7番目に多い「がん」で、この20年間に死亡者数は約3.5倍に増えている。血中PSA値は4.0以下が正常、4〜10では25〜30%、10以上では50〜80%の人に前立腺がんが見つかるといわれている。(NH)

(No083;2007/09/14)


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