医療教育情報センター

No84 国民の求める専門医

 医学の進歩により体内の病的な状態を外部から細部まで描出できるようになり、これらの病変に対する外科的治療も、患者に対して侵襲がより少なくて安全な手術が開発され実用化されている。たとえば胆石症手術は以前には開腹術によるものが主流であったが、最近では腹腔鏡による内視鏡下手術が主流を占めているが、この術式は内視鏡を通した非常に狭い視野の中で行われる手術であるために、正確な解剖学的知識、手術前の的確な診断に加えて高度な手術の技術が必要である。 外科手術の技術を修得するために昔は高名な外科医の医局に入局して、実際手術をしているのを見ながら、師匠の技術を会得していたが、最近ではコンピュータを組み込んだトレーニング装置も開発され、いくつかの大学病院には「内視鏡外科手術トレーニングセンター」が設置されている。若い外科医であっても、トレーニングを積めば一定レベルの技術を修得することが可能であり、その技術を客観的に評価され、さらに手術に必要な解剖学的知識に加え、冷静な判断と決断力を身につけた専門医が実際の手術を担当するようになることを国民は望んでいる。
 日本の専門医の認定は2002年に日本専門医認定制機構(Japanese Board of Medical Specialties)が設立され、そこに所属する学会は基本的領域(18学会)、subspecialtyの学会(28学会)、他領域に横断的に関連する学会(7学会)、それ以外
(13学会)に分けられ、専門医を認定する学会は合計63となり、その認定方法は各学会に任されている。特に技術を伴う専門医の認定は、専門医指導医をまず認定して、その指導医の基で一定の訓練を積むことで技術を修得されたと認定する方法が取られている学会が多い。
 これとは別に日本内視鏡外科学会では消化器外科、呼吸器外科、小児外科、泌尿器科、産婦人科、整形外科の領域で、腹腔鏡、後腹膜腔鏡、胸腔鏡、縦隔鏡などの内視鏡を用いる手術に携わる医師の技術を高い基準にしたがって技術認定取得者を認定する制度を発足させ、実際に行ったビデオを審査の対象として個人の技術を評価しようとしている。このようにして内視鏡下手術を安全かつ適切に施行する技術を有し、かつ指導するに足る技量を有していることを認定しているが、手術をして良い、あるいはしてはならない等を規制するものではないとしている。
 日本でどの分野にどれくらいの数の専門医が必要であるか、国民のニーズに合わせた専門医数を調整する機構は全くなく、例えば脳神経外科の専門医数は2006年には6335人で、人口がほぼ日本の倍である米国の専門医数よりも多いと言われている。
 現在日本の各地で小児科、産婦人科の医師不足が話題となっているが、専門医制度を一般の人にも分かりやすいものにすると同時に、診療科ごとに必要な医師数のコントロールを専門医認定制機構のようなところで行う必要があるのかもしれない。(S.F.)

(No084;2007/10/01)


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