医療教育情報センター

No85 来年から始まる特定健診・保健指導とは

 老人保健法が改正され、「高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)」が、平成20年4月に施行されることに伴って、「特定健康診査(特定健診)」と「特定保健指導」が実施される。これは40〜74歳までの被保険者および被扶養者を対象に、政管健保、国保、健保組合などの医療保険者にその実施を義務付けるものである。同時に労働安全衛生法に基づく労働安全衛生規則も改正され、企業などの職場、事業所においても、この特定健診に基づいた健診が、定期健康診断、一般健康診断などで実施されることになった。
 対象者は実に5,600万人にのぼるとみられ、多くの保険者が医療機関や民間の健診受託業者にこの事業を委託するものとみられている。
 この新しい特定健診・保健指導制度は、糖尿病、肥満、高血圧などの生活習慣病患者予備群を減少させ、医療費の適正化を図ろうという考えに基づいており、実際に厚労省はこの実施により、生活習慣病に起因する医療費を減少させるため、糖尿病などの生活習慣病有病者を平成27年度には20年度と比較して25%減少させる目標を立てている。
 厚労省はこの制度開始に向けて、健康局、保健局、労働基準局などで検討委員会を設置し検討して、「標準的な健診・保健指導プログラム」を作成した。標準プログラムの大きな特徴は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の概念を重要視し、健診項目に腹囲を加えたこと、特定保健指導の対象を生活習慣病予備群に絞ったことなどが挙げられる。
 プログラムによると、先ず健診が行われた後、その結果から保健指導に該当する対象者が選別され、生活習慣病の発症あるいは重症化の危険因子の数によって対象者を階層化する。階層化された保健指導対象者は生活習慣の改善のための指導を受けることになる。この保健指導は、医師、保健師、管理栄養士などが行うが、制度施行後5年以内は実務経験のある看護師も行うことが出来る。指導は一人一回20分以上、6ヶ月後にその成果を評価することになっている。
 こうした制度の導入により、わが国の医療体制が予防医療に大きな力を注ぐことになるという点では評価できるが、すべてのデータが医療保険者と事業者に集まることから個人情報の保護に加え、被保険者(労働者およびその家族)に不利益が生じないか、また強制的に健康診査を行い指導した結果、本当に医療費が削減されるのかといった多くの議論がそのままである。これほど強力に国による医療統制は珍しいといわれているが、こうしたことが今後ますます管理医療へと進んでいかないかという懸念の声も聞かれている。
 メタボリックシンドロームという言葉は厚労省が好んで国民に普及させたが、WHOの診断基準では、腹囲、高血糖は必須としておらず、国際的にも未だ統一されていない。学術的にも論争されているメタボリックシンドロームを集団に適用した際に有効であるという文献はまだないという(三好祐司.日本医事新報 No4352:40−45. 2007)。
(NH)


(No085;2007/10/12)


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