医療教育情報センター

総合診療医への期待

 最近、総合診療医とか総合診療科が注目されている。NHKのBSで2010年度に放映され反響を呼んだ「総合診療医 ドクターG」が、第二部として、NHK総合で7月28日より毎週木曜45分番組として放映される。第1回は次のように紹介されている。
 「これってどういう病気なの?」謎の症状に悩む患者の病名を探り当てるまでの謎解きをスタジオで展開する新感覚の医療推理エンターテインメント。総合診療医は、問診によって病名を探るエキスパート。その“ドクターG”が実際に解決へと導いた実例をドラマにして出題。全国から選ばれた若手の医師が病名当てに挑戦する。第1回はリストラにあった44歳男性の「突然腰が抜けた」という訴え。果たして、患者を救うことが出来るか?
 昨年、民間放送で放送されたテレビドラマ『GM〜踊れドクター』も好評を博した。こうした背景をもとに、NHKは7月の「きょうの健康」で、総合診療科について紹介する番組を放送した。
 総合診療医とはどういう医師なのか。簡単にいうと、消化器とか循環器など臓器別に専門分化した“専門医”の対極にある医師といえる。“神の手”に象徴されるように、専門医に対する期待は今も大きいが、「病気を診て病人を診ない」弊害も指摘されつつある。
 専門医は自分の専門とする臓器しか診ない。型にはまれば能力を発揮するが、少しでも専門を外れると対応できない。いわゆる“専門バカ”ともいえる。病気の背景と関係が深い患者の心理面や家族の問題には関心がうすい。患者の背景をじっくり聴いてから診療を進めるのではなく、いきなり精密検査をすることも少なくない。
 その点、総合診療医は臓器にこだわらず、患者の心理社会的背景にも十分配慮して診療にあたる。したがって、病んでいる臓器を特定できない症状、心理・社会面が強く関与している患者、多臓器が関与していることが多い高齢者などに対応できる。
 こうした総合診療の武器となるのが、患者との時間をかけた医療面接である。一見、受診の動機となった問題と関係がなさそうな症状や情報も切り捨てない。簡単な検査や幅広い病気の知識を活用し、推理によって診断を進める。診断推論というが、謎解きに似ている。これがテレビ番組で反響を呼んだゆえんでもある。
 要するに、総合診療医は専門医と比較してレベルの低い“なんでも屋”ではなく、臓器専門医が不得意な分野をカバーする一定の専門性を持った医師なのである。
 実は、わが国で医療崩壊の原因の一つとして医師不足や医師の偏在が言われているが、不足しているのは専門医ではなく、総合診療医である。実際、2006年に内科医全員が病院を去り、“医療崩壊”の象徴としてクローズアップされた北海道江別市立病院は、その後、総合内科を軸に据えて病院を再生。現在は地域医療を担う総合診療医の育成に力を入れている。
 崩壊したわが国の医療を立て直すには、医療費や医師数を増やすだけでなく、医療の質やシステムを変えることが不可欠である。その意味で、総合診療医は医療を再生し、医療の質を向上させるリーダーとしての役割が求められている。(TI

 [参考]小泉俊三:日本型ホスピタリスト(病院総合医)が医療再生のカギを握る.新医療, 2011年3月号

(No085r;2011/07/29)


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