医療教育情報センター

No86 後期高齢者医療制度と「主治医」

  厚生労働省は、2006年に成立した医療制度改革関連法に基づき、2008年4月より現行の老人保健制度を廃止して75歳以上の人を対象とした後期高齢者医療制度を創設する。本制度の基本的な考え方は、複数の慢性疾患をかかえる高齢者を総合的に診察できる医師が必要であるとし、地域で医師や看護師らがチームを組んで在宅医療を推進することである。
 厚労省はこの考え方をもとに、本制度の診療報酬体系の骨子案を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の特別部会に示していたが、同部会は骨子案を大筋で了承した。今後、社会保障審議会の医療部会、医療保険部会での議論を経て、近く最終案をまとめる。
 骨子によると、後期高齢者は治療が長期化し、複数の病気にかかっていることが多く、認知症を抱えているケースも少なくないことを指摘。生活や家庭状況を配慮し、外来、入院、在宅、終末期医療の四つに分けて、それぞれの医療機関に支払う診療報酬を厚くする事項を示した。
 このうち外来医療については、「主治医」の役割として患者の病歴や服薬状況、他の医療機関の受診状況などを把握して総合的に診療し、専門的な治療が必要な場合には専門医を紹介することを挙げ、こうした活動を行う医師の診療報酬を手厚くすべきだとした。
 後期高齢者医療のキーマンとなる「主治医」について厚労省は、複数の病気を併発したり長期化しやすい高齢者の特性から、患者の心身を総合的に把握する一人の医師とする考えである。しかし、日本医師会は疾患ごとに主治医は存在するとし、「主治医」を一人に決めると「どんな医療機関でも自由に受診できるフリーアクセスの機会を患者から奪うことになる。同省のねらいは医療費抑制である」として反対の意向を示している。
 日本医師会のいう疾患ごとの主治医は「かかりつけ医」であって「主治医」ではない。専門医は整形外科や眼科などにかぎらない。最近は内科医であっても循環器内科や消化器内科など専門医としての開業が少なくないが、本制度で求められている「主治医」は幅広く総合的に診療する医師でなければならない。
 したがって開業医が自分の専門分野にこだわらず、高齢者のニーズに沿った幅広い診療をこころがけ、患者から「主治医」として受け入れられていれば本制度の「主治医」として評価してもよいのではなかろうか。ちなみに、「かかりつけ医」として在宅の現場に赴けば各科にまたがる問題にぶつかり、各専門医へのコンサルトを通じて総合的な診療能力を身につけることも可能であると考える。(TI)

(No086;2007/10/26)


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