医療教育情報センター

まちの保健室

 東京都看護協会は,11月26日午後、飯田橋駅の一角に「まちの保健室」というのぼりをたて、並べられた長机には看護師が座り、通りがかりの方々の血圧測定、体脂肪測定、,健康相談、栄養相談等を行った。「まちの保健室」とは学校の保健室のように、地域住民が気楽に健康相談などを受けることができる場を提供するという、地域における新たな看護ケアシステムをいう。
 日本看護協会は、2000年に入り今世紀の少子高齢社会に備え、新たなケア提供システムの開発に取り組んだ。事前の地域住民への調査において、病気や心や身体のことでちょっとした不安や悩みがあるときの相談先を訪ねたところ、まず家族や親類、ご近所の看護職(看護師、保健師、助産師)に相談するケースが多いことが明らかとなった。このようなニーズに応えるために日本看護協会はモデル事業として「まちの保健室」を全国で開始し、平成16年から各都道府県で事業化し、この新たな看護システムの普及・定着に努めている。現在は各都道府県の看護協会をはじめ、看護系大学や病院がそれぞれの地域の特性を生かした独自の、「まちの保健室」を運営している。
 「まちの保健室」の特徴は3つあげられる。まず看護師はボランティア活動として参加する。二つ目は利用料金は無料である。そしてサービス形態としては住民に身近なサービスが提供できるように、アウトリーチ型(ケアの出前をすること)を主体とすることである。提供しているサービスは設置主体によって異なる。開始当初は、日頃抱えている悩みなどのよろず相談から、血圧や体脂肪、肥満度、骨密度、基礎代謝などの健康測定と事後の個別の健康相談、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症といった生活習慣病予防の健康情報の提供などが主体であった。現在は、これらの健康相談や健康支援を継続しながら、その地域の健康ニーズをアセスメントし、設置主体の人材を生かした質の高いケアの提供にも取り組んでいる。たとえばこころの健康相談では、職場や家族の人間関係、子育てや介護など生活上のさまざまな悩みを抱えた人々に対して、少しでも楽に、そして元気になれるよう、心のケアを専門とするボランティア看護師がサポートをしている。また介護をする家族のための看護相談室を開設したり、病院の看護部や診療部と連携を取って、がん療養相談を行っている看護系大学もある。
 「まちの保健室」の活動を通して、はじめは看護職で始めた事業であったが、いまでは栄養士といった他の医療スタッフもボランティアとして加わっている。また町内会からイベント等への参加依頼があったり、地域の方々と関わることによって互いにエンパワメント(力量形成)され、地域の力の形成に役に立つことなどが確認されている。「まちの保健室」は地域活動をとおして地域住民の健康増進に寄与する、市民参加型の看護提供システムとして注目されている。(EN

(No089r;2011/12/16)


まちの保健室 アウトリーチ ボランティア看護師 エンパワメント 市民参加型看護提供システム

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