医療教育情報センター

No90 メタボリックシンドローム診断基準―再検討の動き―

 日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中であるが、心臓病と脳卒中を引き起こす原因は動脈硬化である。動脈硬化の危険因子といえばコレステロールが有名であるが、最近の研究では、脂肪が内臓のまわりに蓄積した肥満が高血圧、高脂血症、糖尿病などの原因となり、動脈硬化になりやすいことがわかってきた。そして、内臓脂肪型肥満によっていろいろな病気が引き起こされやすくなった状態を一つの疾患概念としてメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と呼ばれるようになった。
 2005年4月、日本内科学会を中心とする8学会(日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓病学会、日本血栓止血学会)が日本におけるメタボリックシンドロームの診断基準を公表した。
 この診断基準では、必須項目となる内臓脂肪面積100平方cm以上のマーカーとして、ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上を「要注意」とし、@血清脂質異常 A血圧高値 B高血糖の3項目のうち2つ以上を有する場合をメタボリックシンドロームと診断するとしている。
 一方、本年4月より、改正老人保健法の施行に伴って特定健康診査(特定健診)と特定保健指導が実施される。これは40〜74歳の被保険者および被扶養者に特定健診を義務付けるものである。同時に労働安全衛生規則も改正され、職場においても特定健診に基づいた健診が実施されることになった(医療ニュース No085;2007/10/12)。
 厚労省はこの制度開始に向けて作成した標準的な健診・保健指導プログラムにおいて、メタボリックシンドロームの概念を重要視し、健診項目に腹囲を加えたこと、および特定保健指導を生活習慣病予備群に絞ったことによって、メタボリックシンドローム診断の必須項目である腹囲の基準が適正であるかどうかについて議論が沸騰している。
 ちなみに、WHOの診断基準では腹囲、高血糖は必須としておらず、国際的にも未だ統一されていない。世界の人種別基準を作っている国際糖尿病連合は2007年6月、日本人の基準を他のアジア人と同様に男性90センチ、女性80センチとすることを発表した。九州大が、福岡県久山町の住民健診結果(2452人)から、心筋梗塞などを起こした人と腹囲との関係を調べると、日本より国際糖尿病連合の基準の方が対象者を的確に把握できたという。
 こうした状況を踏まえ、メタボリックシンドロームの診断基準を決めた日本内科学会など8学会が、基準再検討へ動き出した。日本内科学会は2007年10月、男性85センチ以上、女性90センチ以上とした腹囲の基準などについて再検討する機会を持ちたいという文書を各学会に送付したという(毎日新聞 2007年12月2日)。
 メタボリックシンドロームの概念が導入されるまでは、高血圧、高脂血症、糖尿病が個別に診断され、薬に頼る傾向があった。今ではメタボリックシンドロームが流行語大賞に選ばれるほど内蔵脂肪型肥満に対する国民の関心は高く、自ら生活習慣の改善に動き出している意義は大きい。日本人は物事をイエスかノーかどちらかに決めたがるが、メタボリックシンドロームの診断基準についても柔軟な対応が求められる。(TI) 
メタボリックシンドローム,診断基準,内蔵脂肪型肥満,腹囲,特定検診・保健指導
(No090;2008/01/10)


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