医療教育情報センター

No93 高齢者の終末期医療

 日本の人口は2006年に65歳以上の高齢者が総人口の20%を超える超高齢社会になり、2050年にはそれが35%となって、しかもその内75歳以上の高齢者が5分の3を占めることが予測されている。それに伴い年間の死亡者数も増加し、2004年には100万人を超え、2040年には166万人と予測される。人の死亡率は100%で、この世に生を受けた時から死ぬ運命にあり、高齢者はその確率が高くなる。
 がんの末期医療に関しては、1990年から緩和医療病棟への入院費用が健康保険で認められ、ようやく医療の中に定着してきたが、この病棟にはがん患者かHIVの患者しか入院できず、がん以外の高齢者の末期患者は一般病棟か老人保健施設・特別養護老人ホーム、あるいは在宅で最期を迎えることになる。
 英国では1997年に緩和医療の専門医が認められるようになり、がん以外の疾患末期の患者の医療が専門的立場から提供され、関連する専門学会が合同で緩和医療のためのGold Standards Frameworkを患者・家族向けと医師向けに予後指標ガイダンスを公表している。米国では在宅療養を中心としたホスピスが普及して、がん以外の末期患者へのケアを提供するように努力されているが、がん以外の患者で生命予後が6ヶ月という医師からの診断が得られ難く、高齢者を対象とするメディケイドによるホスピスプログラムへの適応が少ないと言われている。米国で末期の診断を受けてから患者は約30ヶ月生存し、その間に平均的患者が使用する医療費の75%を使うという統計もある。
 高齢者は多くの疾患を抱えており、それぞれの疾患が進行して末期になるとどれが原因で死亡するか分からず、感染症を併発してどこまで治療をするのか、認知症末期になり嚥下障害のため経口摂取が出来なくなった時、経管栄養にするか胃瘻造設をするかが問題となる。臓器不全が進行してどこからが末期なのか、担当する医師の考えでも異なり、高齢者では老化により回復可能性も低下しているので、治療効果の期待も少なくなる。疾病の診断・治療から症状緩和、あるいは治癒から癒しへの意識転換が必要と考えられる。
 新たに後期高齢者医療制度が2008年4月より実施されることになるが、高齢者の終末期患者にとって必要な医療を考えるために各専門医の立場から末期症状・予後のデータを示し、末期症状を緩和させるための対処法を提案すべきであると思う。臨床現場で若い研修医は担当する高齢者終末期患者の検査データを改善させるために、高度の貧血があれば輸血をするのを見受けるが、必要性の根拠を示して指導できるデータがないのかも知れない。(SF)


高齢者終末期医療後期高齢者医療制度ホスピス緩和医療
(No093;2008/02/19)

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