医療教育情報センター

ナラティブ・メディスン

 近代医学の進歩は目覚しく、新しい治療法が開発されて日常臨床に応用されるようになった多くの治療法の中から患者に最適の方法を選択するには、それまでのデータに基づく医療(EBM)が行われてきた。一方個々の患者にはそれぞれ個性があり、それに合わせた治療法が求められ、1980年ごろから英国で物語に基づいた医療(NBM)が提唱されるようになり、科学的根拠に基づいた医療(EBM)を補完するものとして欧米で浸透してきた。2000年ごろから米国のリタ・シャロン教授(コロンビア大学)は医学教育の中に取り入れ、ナラティブ・メディスン(Narrative Medicine)として普及に努めている。
 病の背景を探るため、対話を通して「患者の物語」を紡ぎ出し、全人的な診療を行うという「物語的な視点」を取り入れる流れが注目されている。「ナラティブとは、語り手、聴き手、時間経過、筋書き、そして目的を備えたストリーである」とされ、患者の世界を患者の視点から眺め、解釈する必要がある。これは医療の分断に橋を架ける役割を果たし、その特徴として時間性、個別性、因果性/偶有性、間主観性、倫理性が挙げられ、「物語能力」として、認識、吸収、解釈、心を動かされて行動することしている。このような能力を開発するために、シャロン教授はパラレル・チャートの記載を採用し、患者からの物語を聞いてカルテに記載すると同時に学生が感じたこと、思い出したことなどを別のパラレル・チャートに記載して、その後のグループ討議で話しあい、学生が自分の気持ちを率直に述べることにより、気づきを開発している。
 特に終末期医療はデータに基づく医療ではなく、それぞれの患者が生きてきた歴史を持ち、異なったストリーを持っているので、その患者の持つ物語に沿った医療が必要である。(SF)  

(No093r;2012/05/04)


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