医療教育情報センター

一過性脳虚血発作

一過性脳虚血発作は脳血管障害により突然、片麻痺(右上下肢などの一側の麻痺)、失語症、失明、対麻痺(両下肢麻痺)などの脳や網膜や脊髄の症状が出現し、24時間以内(通常10〜20分以内)に回復する、またはMRI(DWI)で虚血巣を認めない病態をいう。米国では人口10万人に8.3人発症し、3か月以内に脳梗塞の発症が14.6%である。その病因として現在広く受け入れられている考えによると頸動脈や椎骨動脈などの頭蓋外部分に粥状硬化があり、そこに付着した血栓がはがれて頭蓋内や脊髄腔内の末梢脳血管に流入し、そこを閉塞して症状が出現する。やがて血栓は溶解して症状が消失する。これを微小塞栓説という。一方、古くから脳血管不全説があり、この機序で説明しうる症例もありうる。一過性脳虚血発作の症例でCTあるいは剖検でその症状に一致する梗塞巣が見いだされることがある。一過性脳虚血発作の18%に血管狭窄、閉塞があったとの研究がある。
 発症した時には区別がつかない一過性脳虚血発作と脳梗塞を合わせて急性脳血管症候群と呼ぶ。急性心筋梗塞と不安定狭心症を合わせて急性冠症候群と呼ぶのと対応している。
 一過性脳虚血発作の約10~20%は急性脳梗塞へ移行し、脳梗塞の前兆として重要である。脳梗塞へ移行する危険予測を立てる必要がある。ABCD2スコアは、A(age年齢)は60歳以上1点、B(blood pressure血圧)は収縮期血圧140以上または拡張期血圧90以上1点、C(clinical feature臨床症状)は言語障害1点、片麻痺2点、D1(duration持続)は症状10分以上1点、60分以上2点、D2(diabetes mellitus糖尿病)は1点、を合計したスコアが4点以上では脳梗塞発症の危険が高いと考え入院精査が必要と考えられる。
 急性期治療の重要性は、一過性脳虚血発作発症後48時間に脳梗塞の半数が発症している。一過性脳虚血発作発症後24時間以内に治療すると、3か月後の脳梗塞発症は2%と減少した。発症後20日後の治療に比べ80%脳梗塞の発症が減少し後遺症も少なかった。治療は抗血小板薬、ACE(アンギオテンシン変換酵素)、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)、スタチンが使用される。
 Time lost, brain lost (時間が過ぎれば、脳を失う): 早ければ早いほど改善する。でも発症する前に治療すればリスクを回避できる。(SS

(No094r;2012/06/01)


急性脳血管症候群 脳梗塞の前兆 危険予想 ABCD2スコア 急性期治療

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