医療教育情報センター

No95 「東京医師アカデミー」開講

 我が国で医療崩壊が進んでいる最大の原因は、医療費の抑制と医師不足であろう。ある識者は、「MRIなど当たり前という高度医療の普及が多くの専門医や看護師を必要とするようになり、そして国民の誰もが等しく高度医療を求めるようになったことが医療費の増大を招いている」と述べているが、卓見である。
 この問題を解決するために、大学医学部の定員を増やすとか、医療費の国庫負担を増やすだけでは追いつかない。高齢社会における医療では高度医療を必要とすることは少ない。むしろ、生活の場で高齢者を全人的に診て必要に応じて専門医に紹介してくれる総合医を養成することこそ急務である。
 東京都は本年1月、「第二次都立病院改革実行プログラム」を策定し、具体的な計画を示した。計画は施設の整備だけでなく、人材育成も重要な柱となっている。臨床研修については都立病院が連携し、若手医師を養成するための「東京医師アカデミー」を4月に開講する。これは医師不足に対して人材を育成し確保することをねらいとしている。
 「東京医師アカデミー」とは、2年間の初期臨床研修を終えた医師から、シニアレジデント(後期研修医)を約100人募集し、3-4年間の後期臨床研修を行うプログラムである。(1)基本領域、(2)サブスペシャリティー領域、(3)総合診療領域――という3分野にわたるプログラムを組み、総合診療能力を有する専門医の育成を目指す。
 研修施設については、複数の都立病院・公社病院で行うことにし、これまで各病院が個別に行ってきた研修よりも幅広い症例に触れることや、より専門性が高い病院での研修を可能にする。
 プログラムは東京都だからこそ実施可能とも言えるが、従来、大学の医局に医師の派遣を依頼していた自治体が、総合診療能力を備えた医師の養成・確保に乗り出したことは画期的であり評価できる。
 国民の意識改革も必要である。総合診療は臓器別の専門診療より下に見られがちで、「専門医が総合医より偉い」という思いこみが根強い。地域住民に近いところで、人間を丸ごと診てくれる総合医こそ医療の本流であることを知るべきである。 (TI)


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(No095;2008/03/21)


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