医療教育情報センター

肺炎の新しい概念 ―医療・介護関連肺炎:NHCAP―

 厚労省が毎年発表する日本人の死因別順位は、「がん」が29.5%で第1位、「心疾患」が15.8%で2位、「脳卒中」が10.3%で3位、以下「肺炎」が9.9%、「老衰」が3.8%と続く(2010年、人口動態統計)。このうち「がん」、「心疾患」、「脳卒中」はこの50年間、3大死因として上位を独占してきたが、医療技術の進歩により「脳卒中」の死亡率は減少し、それに代わって「肺炎」の死亡率が増加傾向を示し、第3位の座は「肺炎」に変わるのではないかと予想されていた。
 平成24年6月5日、厚労省は平成23年の日本人の「肺炎」による死亡者数は12万4000人で、「脳卒中」の12万3800人を上回り、ついに第3位になったと発表した。とくに高齢者の死亡者数は年齢とともに高く、90歳代男性では「肺炎」が死因の第1位を占めるに至った。超高齢者社会を迎えたわが国では、平成25年には高齢化率は25%に達する。それだけにこの「高齢者の肺炎」は、大きな課題である。
 現在、高齢者に有効な肺炎の予防のためのワクチンは、肺炎球菌ワクチン(23価ポリサッカライドワクチン、製品名ニューモバックスNP:PPV23)のみである。しかし定期接種の対象にはなっていないし、高齢者に対する保険の適用にもなっていない。そのためかわが国でのPPV23接種率は未だ10%台であり、認知度も低い。一部公費負担をする自治体あるが十分とはいえない。死因の第3位となった「肺炎」を減らすためにも、全額公費負担で受けられるよう国は考えるべきである。
 こうした高齢者の肺炎に関して、日本呼吸器学会は平成23年8月、従来の市中肺炎(地域社会で日常生活を営んでいる人に発症する肺炎、Community acquired pneumonia:CAP)と院内肺炎(病院に入院後48時間以上経過して発症する肺炎、Hospital acquired pneumonia:HAP)という分類とは別に新たに医療・介護関連肺炎(Nursing and Health−care associated pneumonia:NHCAP)という概念を提唱した。その定義は、@長期療養型病床群あるいは介護施設に入所している、A90日以内に病院を退院した、B介護を必要とする高齢者、身障者、C通院して継続的に血管内治療を受けている、の4項目のうち、一つでも該当する者はNHCAPとしてCAP, HAPと区別する、としている。この概念は既に米国で認められており、介護保険制度下のわが国の現状に照らし合わせて考案されたものという。今後更に増え続けることが予想される高齢者肺炎に対してあらゆる角度からの対応が迫られている。(NH

(No095r;2012/07/30)


三大死因 高齢者肺炎 市中肺炎 院内肺炎 医療・介護関連肺炎

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