医療教育情報センター


炎症性腸疾患Inflammatory Bowel Diseases (IBD)

 −潰瘍性大腸炎とクローン病(肉芽腫性腸炎)−病理診断医の立場から これは総称的な名称で、潰瘍性大腸炎とクローン(Crohn)病が代表的なものである。両方とも慢性のものなので慢性炎症性腸疾患CIBD(Chronic IBD)とも呼ばれる。この二つの病気は日本でも増加の一途をたどっていると言われ、患者さんの数は14万人を超えるそうである。両方とも原因不明なので診断や治療が難しかった。また大腸癌の併発率は一般人より高く、潰瘍性大腸炎では20倍近く、クローン病で約3倍とのことである。頻回の下痢や血便・下血、粘血便、腹痛などで気付かれる。潰瘍性大腸炎は元総理のお一人が在職中に発病されたことでよく知られており、最近のテレビ放映で、その元総理は最近よい治療法が開発されたことで良くなったと言っておられた。
 大腸内視鏡が発達したので、粘膜生検の病理検体が激増している。しかし顕微鏡で観ても診断困難なことがある。粘膜の微小な部分しか観察出来ないためである。潰瘍性大腸炎は主に粘膜が侵されるが、クローン病では大腸壁が全層侵され得る。と言うことは粘膜生検では病変が全層性か、粘膜に限局しているかを判断出来ない。クローン病は回腸末端炎と言われていたように小腸の末端部に病変があることで知られたが。大腸にも生じ、時には食道・胃など消化管全てに発生することもある。クローン病では病理組織学的に結核に似た類上皮細胞肉芽腫を見るが、結核と違い乾酪壊死は無い。生検でこの肉芽腫が100%の例に発見されるわけではない。潰瘍性大腸炎の病変部は非特異的炎症反応を呈する。結核症では結核菌に対する特別の組織反応(特異的)が見られ、その反応をみれば結核菌の感染による病気であると、結核菌そのものを見つけなくても、病理診断が決められるということである。非特異的とは、様々な異なる原因であっても人間に起こる組織反応はほぼ同じであって、その組織反応からは原因を推定出来ないということである。どちらも潰瘍を形成するが、粘膜表面から観た時の潰瘍の形態や、病変の分布に若干の相違がある(潰瘍性では直腸が冒されることが多いが、クローン病では痔瘻を併発することがある)ので、臨床医と病理医との綿密な情報交換が重要である。
 従来から免疫異常に関係すると言われてきた潰瘍性大腸炎では、抗腫瘍壊死因子TNF(Anti-Tumor Necrosis Factor)製剤、免疫調節薬、血球成分除去療法が最近開発されている由なので消化器科の専門医に相談するとよい。
 虚血性大腸炎(腸間膜動脈の動脈硬化による)或いはベーチェット病や膠原病性の腸炎なども診断が難しく、腸結核やアメーバのように原因のはっきりしているもので慢性のものもこの総括的な名の下に含まれることがある。(IS

(No097r;2012/09/21)


潰瘍性大腸炎 クローン病 肉芽腫性大腸炎 炎症性腸疾患 IBD

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