医療教育情報センター

No98 後期高齢者医療制度の背景と不評

 4月に始まった後期高齢者医療制度は、増え続ける老人の医療費を、どう賄うかとの議論から出発し、対象となる75歳以上のお年寄りの立場からの視点が弱かったため、不評である。
75歳以上の人は全員この制度に入り、医療費の5割を税金で、4割を現役世代からの支援で、1割を自らの保険料から負担するというもの。
 国家財政を再建し、現役世代の負担を抑えて国民皆保険を支えるためには、高齢者の医療費の抑制が必要という考えがこの改革の背景にある。1973年の老人医療費の無料化により、「待合室サロン化」、「ハシゴ受診」、「乱診乱療」が問題視され、77年老人医療費の急増で、高齢者が多く加入する市町村単位の国民健康保険の財政が悪化した。議論の末に老人保健制度が83年に始まった。これは老人の医療費を賄うために健康保険組合、共済組合、国民健康保険組合がお金を出し合う仕組みである。90年代のバブル崩壊後は、中小企業の社員が主に加入する政府管掌健康保険を中心に財政が悪化し、老人保健制度への拠出金への不満が高まった。02年サラリーマン本人の患者負担を2割から3割に上げることに不満がつのり、新しい高齢者医療制度の創設を政府は約束した。新たな高齢者医療制度は、65歳〜75歳は国民健康保険と被用者保険(政府管掌健康保険組合、共済組合、健康保険組合)の医療費負担の不均衡の調整という83年来の老人保健制度と本質的には同じで、75歳以上は独立した後期高齢者医療制度となった。
 この制度が具体化して以降、意識されたのは常に現役世代の負担であり、切り離されるお年寄りへの目配りが薄かった。当事者であるお年寄りの怒りが表面化し、世の中がそれに気づいたのは08年春、新しい保険証が手元に届き始めてからであった。

(SS)


後期高齢者医療制度 高齢者医療制度 老人保健制度 老人医療費 医療費抑制 
(No098;2008/05/16)


医療ニュース・バックナンバー