医療教育情報センター

No100 ジェネリック医薬品の功罪

 平成20年4月より厚労省はジェネリック医薬品の使用を促進するため、保険医療機関及び保険医療担当規則等を改正した。ジェネリック医薬品とは後発医薬品、すなわち新薬の特許期間が満了してから発売される医薬品のことで、基本的には新薬と同じ有効成分を含んでいるとされている。ジェネリック医薬品の最大の特徴は安価な点である。
 新薬の開発には10年以上の歳月と500億円以上の開発費が必要であるという。そのため新薬には特許期間中は開発メーカーに対して独占的なビジネスが認められているが、特許期間が終了すると他の製薬メーカーもジェネリック医薬品を製造して市場に参入できる。ジェネリック医薬品は新薬のような開発費がかからないので、新薬の約2〜7割のコストで販売できるという。
 医療費削減に必死な厚労省はここに目をつけ、今回、「医師は投薬(及び注射)を行うに当たっては、ジェネリック医薬品の使用を考慮するよう務めねばならない」という努力義務を課した。しかしこれまで医療の現場ではジェネリック医薬品に対して、薬効や製品に関する情報の面などで不安があるという声があり、それが解決されないまま「使え」という今回の通達に、医師や薬剤師から問題とする声が強く上がっている。
 新薬とジェネリック医薬品で薬効が全く同じであるという確実な証拠はない。確かに有効成分は同一ということになっているが、製造工程や薬剤製品として加える添加物などは異なる。とくに添加物は薬剤において重要であり、例えば錠剤の場合、有効成分は約40%で残りの6割は添加物であるから、この添加物が何であるかによって薬効も副作用も異なってくることは想像に難くない。また国の承認を受けるときの多くの試験の対象にも問題があるとされている。さらに製品の情報や副作用に関する報告も新薬メーカーとジェネリックメーカーでは、MRと呼ばれる製品説明の営業スタッフの数が違うため、医師や薬剤師との間の連携不足も問題となっている。
 欧米ではジェネリック医薬品の普及率が高いというが、それは医師が書く処方箋にその理由がある。欧米では先発メーカーだけにブランド名での販売が許可されるが、ジェネリック医薬品は「一般名」でしか販売できない。わが国ように同じ成分の薬でも製薬メーカーごとに製品名が違っていては、医師は宣伝力の強いメーカーの薬を処方する傾向になりかねない。例えばある有名な有効成分を含んだ先発医薬品(抗炎症薬)のジェネリック医薬品は何と70種もあり、これがそれぞれ類似の名称を持って販売されていては、処方箋を書く医師はどの薬を使ってよいか混乱することになる。しかも処方箋を書いた医師は、院外薬局でジェネリック医薬品を調剤されたとき、患者との会話がかみ合わず、リスク管理の面でも問題が起こりかねない。
 ジェネリック業界は今年を「ジェネリック元年」として沸き立っているようだが、自社製品の売り上げよりも、まず真に薬効と副作用についての科学的検証を最重要課題として捉え、患者と医師が信頼して使用できるよう全力を挙げて欲しい。
 最近、健康保険組合が被保険者(患者)に対し、「次に診療を受けるときは○○というジェネリック薬品を使ってもらうように。そうすると○○円の支払いで済む」という指示を出していると言う。しかしこれは患者の個人情報が健康保険組合に漏れていることを意味し、個人情報保護法の面から問題であろう。さらに医師の処方権、裁量権を侵しかねない。国がジェネリック医薬品を進める裏にさまざまな問題が潜んでいることに注意することが必要である。(NH


ジェネリック医薬品 新薬開発 医療費削減個人情報保護 医師の処方権 
(No100n;2008/06/20)


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