医療教育情報センター

保健指導と行動変容

 わが国の主要死因である悪性新生物や循環器疾患等を予防するためには、問題ある保健行動を望ましい方向に改善していく必要がある。この行為を「行動変容」という。この行動変容こそが健康教育の主目的である。行動変容を支援するためには、さまざまな理論が活用されている。行動変容とその維持に関連する理論のうち、アメリカの心理学者であるプロチャスカ(Prochaska J.O.)、ディクレメント(DiClemente C.C.)らは、生活習慣の改善を1つのプロセスと捉え、本人の関心の程度や実行状況に応じてステージ分類する考え方を提唱した。支援者が対象のレディネスを理解したうえでその段階に応じた働きかけを行うことによって、支援を、対象を主体としたより有効なものにすることができる。この考え方をもとにプロチャスカは、変化ステージ理論を提唱した。禁煙サポートや体重コントロール、運動プログラムなど、保健医療の現場においてよく活用されている。
 変化ステージ理論では、人の行動が変わり、それが維持されるには以下の5つのステー ジを通ると考える。@6カ月以内に行動を変える気がない時期(無関心期)A6カ月以内に行動を変える気がある時期(関心期)B1カ月以内に行動を変える気がある時期(準備期)C行動を変えて6カ月以内の時期(行動期)D行動を変えて6カ月以上の時期(維持期)。そして人が行動変容を起こして、それが維持されるには無関心期から始まって段階的に各ステージに移動して維持期に至ると考える。この過程は、いつも順調に一方向に進むとは限らずに、場合によっては元のステージに戻ってしまうこともある。
 対象者が現在どのステージにいるかによって、対象者に有効な働きかけ(介入)を行う。介入方法は、「考えに関する方法」と「行動に関する方法」に大別される。「考えに関する方法」には意識の高揚、感情的経験、環境の再評価、自己の再評価、社会の変化を知ること、などがある。「行動に関する方法」には代替行動の学習、援助関係の利用、褒美、コミットメント(決意、行動変容する能力を信じる)、刺激のコントロールなどがある。
 禁煙サポートのステージごとの介入の実際(例)は、以下のとおりである。関心期では 意識の高揚(いろんな人からタバコをやめろと言われている)や感情の体験(あまりみんながうるさく言うので、少しムカかついている)、環境の再評価(タバコの煙には害がある)を促す。準備期では自己の再評価(タバコを吸わずにはいられない自分が情けない、やめたら長生きできる)を促す。行動期には、行動変容の決意(ついにタバコをやめようと思う)と行動を促す。維持期には自分に褒美を与えたり、より健康的な代替行動(ウォーキングなど)をはじめたり、同じく禁煙にチャレンジしている人々と交わったり、灰皿を身の周りから遠ざけたり、喫煙場所に近づかないなど刺激のコントロールを行う。無関心期にとどまる原因にはタバコが健康その他の生活面で深刻な問題を引き起こしうる情報の不足と過去の禁煙の失敗があげられている。支援者の根気強い関わりが必要であろう。(EN

(No100r;2013/1/11)


行動変容 変化ステージ理論 レディネス 禁煙サポート

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