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ロコモティブ シンドローム


 ロコモティブ シンドローム(locomotive syndrome、運動器症候群)とは、「運動器の障害によって要介護になるリスクの高い状態」のことで、2008年(平成20年)、日本整形外科学会が提唱した新しい概念である。運動器とは骨・関節・筋肉・神経など人間が移動や活動を行うための器官である。運動器に障害が起こると、日常生活は不自由になり介護が必要となる。同学会は、運動器の疾患が高齢者の「寝たきり」の大きな原因となっていることを国民に認知してもらうために、ロコモテイブ シンドローム(以下、ロコモと略す)の重要性を提唱した。
 厚労省の国民生活基礎調査によると(2010年)、介護や支援が必要となった原因は、運動器疾患が21.1%で、1位の脳血管障害の21.5%と変わらないほど多い。認知症は15.3%、高齢による衰弱は13.7%であるから、運動器疾患を予防することが、「寝たきり」を防ぐためにいかに重要であるかが分る。
 運動機能は加齢とともに徐々に低下していくので、毎日の日常生活の中で、自分の「衰え」を認識することが大切である。その自己チェックのために7つの項目が考案されており、これを「ロコモチェック」と呼んでいる。
@ 片脚立ちで靴下がはけない。
A 家の中でつまずいたり転んだりする。
B 階段を昇るのに手すりが必要である。
C 横断歩道を青信号で渡りきれない。
D 15分くらい続けて歩けない。
E 2kgくらいの物(1リットルの牛乳パック2個)を持ち帰るのが困難である。
F 家でのやや重い仕事(掃除機を使う、布団の上げ下ろし)が困難である。
 以上7項目のうち、ひとつでも該当すれば「ロコモ」の可能性がある。ロコモチェックに該当したり、足腰の衰えを感じたら、先ずトレーニングを勧めたい。これをロコモーション トレーニング(ロコトレ)という。中高年者では脊椎や膝関節の加齢による変化は既に始まっていることが多いから、膝や腰に過剰の負担がかからないように注意する。「ロコトレ」は足腰の筋力の強化、バランス力の向上、膝や腰への負担を軽くすること、の3点が重要である。そのために家庭でも手軽に出来る方法として、「開眼片足立ち」、「スクワット」などが勧められるが、これに加えて各地で行われている朝のラジオ体操や太極拳、さらに適度なウオーキングがよい。
 国も「ロコモ」対策にのり出している。2013年度から始まる第2次国民健康づくり運動(第2次健康日本21)に「ロコモ」の認知度向上を盛り込んだ。整形外科学会の調査によると、現在国民の「ロコモ」認知度は17.3%に過ぎないが、10年後の2022年度には80%にするという目標を設定した。かって国は、生活習慣病を防ぐため、メタボリックシンドロームの認知度の目標を80%に設定したが、実際には92.7%の国民が認知したという実績がある。今回も国民が「ロコモ」を十分認知してこれを減らすことが出来れば、超高齢者社会における「寝たきり」を減らすことが出来るというのである。まさに「メタボ」の次は「ロコモ」である。 (NH

(No101r;2013/02/08)


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