医療教育情報センター

No109 AND(自然死容認)

 救急医療の現場では体外式心肺蘇生術により多くの患者が救命されて回復する場面を見るが、一方慢性疾患の医療現場では疾患が末期になり、回復の可能性の低い患者の心臓・呼吸が停止したとき、回復の可能性はほとんどないためあらかじめ蘇生術を行わない(DNR:do not resuscitate)という指示がカルテの表紙に記入されていることがある。特に高齢の患者に心停止が起こった時には、心肺蘇生術のために胸部を強く圧迫すると肋骨骨折が生じることは確実なので、回復の可能性がないのであれば効果のない蘇生術はしない方がよいのではないかと思う。
 最近では終末期の患者に対する医療行為、例えば延命治療、経管栄養や心肺蘇生術に関して、患者・家族の意向を確認するようになっているが、心肺停止時に蘇生をしないことは、患者を放置するような印象を受けて抵抗感をもつ人もいる。
 その際、「蘇生をしない」(DNR)の代わりに(AND:allow natural death)(自然死容認)と言う言葉が聖職者のチャック・メイヤーにより提唱された。2004年ごろからこの用語についての議論が行われるようになり、最近のアンケート調査でも回復の可能性のない患者に対する救命処置に関して、DNRよりもANDのほうが受け入れられやすく、より適切な処置が選択される可能性があることが指摘されている。  介護が必要で特別養護老人ホームに入所している高齢者の終末期の医療は、複数の疾患の末期にあり、急変時に蘇生術を行っても回復の可能性はほとんどなく、家族の多くは入所者の最期は何もしないで「枯れ木が倒れるような死」「自然な死」を望んでいるようである。本人あるいは家族にあらかじめ心肺蘇生術を行うか否かを訊ね、看取り同意書に署名をもらうにするが、「蘇生をしない」というよりも「自然死」と言う方が受け入れやすいように思われる。(SF


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(No109n;2008/11/14)


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