医療教育情報センター

No111 「孤立」を癒す「地域の力」

 最近の凶悪犯罪(元厚生次官宅襲撃事件,秋葉原の無差別殺傷事件)など)の共通点として社会学者の中央大学山田昌弘教授は、いずれの容疑者も「孤立」している点を指摘し、「正規雇用が主流だった時代は会社という所属する場があったが、非正規雇用が拡大する中,家族や地域の力も落ち、身の置き所がない孤独な人々が増えていること」に注目し、事件の予防策として「雇用環境の改善」が大切と述べている(読売新聞、12月6日)。  「孤立」への対応について、健康の側面から考えてみたい。WHO(世界保健機関)は健康について、「身体的,精神的,さらに社会的にも完全に良好な状態である」と定義した。「社会的に良好な状態」とは、まわりの人々や社会との関係において孤立や過度の対立などがなく、自己の居場所と役割が得られ、その役割を果たせている状態を指している。この定義は健康とは単なる身体の状態のみではなく、人間を「人々と共に生きる生活者」として捉え、健康を包括的に考えていかねばならないことを私たちに示した。従って健康を守るためには、治療(curing)も大切であるが,それだけですべてが解決するわけではないといえる。  そこで近年注目されていることは、ケアリングの重要性である。ケアリングはケアや看護の同義語として用いられていることが多いが,ガードウ(Gadow,S.A)は、ケアリングとは傷つきやすさを守るためのかかわりと説明をしている。具体的には「慰め」「思いやり」「気遣う」「共感」「そばにいる」「関心」「やさしさ」などが挙げられる。これらは看護実践の中心であり、道徳的理念である(J.Watson)。  地域での「孤立」の予防策の1つとして「声かけ」があげられる。目と目を合わせて,互いを気遣い、関心を向けるといったかかわりは、人間性を育み、互いの人間性に活力を与え続けるといわれている。(EN


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(No111n;2008/12/16)


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