医療教育情報センター

No112 モンスターペイシェントの実態

 近年、教育現場で不当な要求をするモンスターペアレントが問題になっているが、医療現場では医師や看護師ら医療従事者らに対して理不尽な要求や暴言・暴力を繰り返すモンスターペイシェント(Monster Patient、モンスター患者)が増加して社会問題化している。そのために医療従事者が精神的に疲れ果て医療崩壊の一因ともなっている。
 具体的には、少しでも待ち時間が長くなると「いつまで待たせるんだ」と医師や看護師をどなりつけたり、対応が気に入らないと胸ぐらをつかまれるといった暴力沙汰は日常茶飯事だという。なかには「検査に異常がなかった」、「治療がうまくいかない」と言いがかりをつけ医療費の支払を拒否するケースも出てきている。
 こうした患者が出現する背景には、「医療は安全で、病院に行けばすぐ正しい診断をつけ、すぐに治してくれる」という医療に対する過度の期待がある。さらに、医療を一般のサービス業と勘違いし、医療費を払っている客の言うことを聞けという意識があるようである。
 実際、マスコミが医療事故を大きく扱うため医療不信は高まり、同時に患者の権利が強くいわれるようになり、病院が患者を「患者さま」と呼ぶようになった平成12年ごろからこうした患者は増え始めている。
 全日本病院協会「院内暴力等に関する実態調査ワーキンググループ」では、こうしたモンスターペイシェントの実態を把握するために、2008年1月会員病院である2248病院を対象に調査を行い(http://www.ajha.or.jp/)、1106病院から回答を得た(回答率49%)。
 それによると、患者から暴言や暴力があったと回答した病院は半数の576病院におよび、暴力やクレームの発生件数は6882件に上った。内訳をみると、暴言を吐かれるなどの精神的暴力が2652件、身体的暴力は2253件、セクハラは900件だった。
 院内暴力を防ぐための病院の措置としては、院内に「暴力は許さない」とのポスターを掲示する、監視カメラを設置する、警察官OBを配置する、護身用のスプレーを常備するなど、さまざまであった。
 今回の調査は、モンスターペイシェントによるトラブルを病院だけで解決するのはもはや限界であることを示している。患者のモラル低下があることは言うまでもないが、医療に対する無理解もある。医療には限界がありリスクを伴うこと、医療は国民の共有財産であること、患者自身も医療を守らねばならないことなど、正しい医療教育が必要であると考える。 (TI


モンスターペアレント モンスターペイシェント 医療崩壊 医療不信 医療教育
(No112n;2009/01/08)


医療ニュース・バックナンバー